植生の変化 宮島の植物と自然
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植生の変化 -遷移-
植生(しょくせい)
ある土地(とち)に生育する植物集団(しゅうだん)の全体(ぜんたい)を植生と言います.植生は,それが存在(そんざい)する場所(ばしょ)の気候(きこう)や土壌(どじょう)などの環境条件(かんきょうじょうけん)に応(おう)じるように,異(こと)なる植物集団からできています.とくに,気温(きおん)や降水量(こうすいりょう)により見た目(みため)(相観(そうかん))が異なってきます.また,人間の活動(かつどう)の程度(ていど)も相観に大きな影響(えいきょう)を与(あた)えます.
遷移(せんい)
植生は時間経過(けいか)とともに,裸地(らち)からより安定した植生(極相)へ向かって変化していきます.この変化を遷移といいます.日本のような雨の多い温暖(おんだん)な場所では遷移は裸地から極相に向かって進みますが,様々(さまざま)な外的要因(がいてきよういん),とくに人間の活動により逆向(ぎゃくむ)きの遷移が起こることがあります.これを退行遷移(たいこうせんい)と呼びます.退行遷移に対して,普通の方向の遷移を進行遷移(しんこうせんい)と呼ぶこともあります.宮島を含む瀬戸内海(せとないかい)周辺(しゅうへん)では,裸地から極相に達するまで,数百年かかると考えられています.
植生と人間
日本では,古(ふる)くから森林と人間とが共存(きょうぞん)し,その資源(しげん)や景観(けいかん)が有効(ゆうこう)に活用(かつよう)されてきました.宮島などの日本三景(にほんさんけい)に代表(だいひょう)される白砂青松(はくしゃせいしょう)は典型的(てんけいてき)な日本の風景(ふうけい)とされます.また,田園風景(でんえんふうけい)を構成(こうせい)する里山(さとやま)も同様(どうよう)に日本の原風景(げんふうけい)のひとつです.これら両者に共通するのがマツ林で,瀬戸内海沿岸を代表する森林植生です.マツ林は遷移の段階(だんかい)から言(い)えば,高木(こうぼく)が陽樹(ようじゅ)の段階で止(と)まったものと考えることができます.瀬戸内海では人間が森林を利用することでマツ林が維持(いじ)されて来た場所が多く見られましたが,1970 年代から広がった松枯(まつが)れや,森林の不適切(ふてきせつ)な管理(かんり)により,この風景が現在失(うしな)われつつあります.
「宮島の植物と自然」内のページ
「宮島の植物と自然」(広島大学大学院理学研究科附属宮島自然植物実験所 2009)内で掲載されているページ.
- 18-19 pp.
文献(引用)
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