植物観察会/KansatsukaiPageMiniLetter443

提供: 広島大学デジタル博物館
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ヒコビアミニレターNo. 443(2015年6月10日)

 第567回植物観察会は,2015年6月6-7日の日程で,長崎県長崎市脇岬町の長崎県亜熱帯植物園と長崎市岩屋町岩屋山で開催された.亜熱帯植物園は長崎半島の最西南端の野母崎に位置し,過去にヒコビア植物観察会の世話もされていた中西弘樹先生(長崎大学名誉教授)が名誉園長を担当されている.今回は,中西先生に現地の案内を頂いた.

 6月6日.天気は晴れ.参加者11名.慣例に従い,現地である長崎県亜熱帯植物園集合とした.参加者の大半は長崎駅11時6分発の路線バスに乗車した.道中,ダンチクホルトノキイヌビワアカメガシワ(花),トベラハゼノキビロウソテツなどがある.また,沖合に軍艦島が見えた(その後,世界遺産に指定).12時30分頃,植物園入口に到着.中西先生に挨拶をして,眺望の良いレストランですぐに昼食.昼食後,集合時間の13時30分ころから観察会開始.中西先生の紹介と挨拶のあと,中西先生から亜熱帯植物園の概略と植物園一般的な役割等について説明があり,その後園内を観察した.亜熱帯植物園は天草灘や橘湾を一望できる立地にあり,観察会当日も天草や島原半島が見えた.園内では約1,200種,45,000本の植物が見られる.気候が温暖であるだけでなく,長崎県内でみても局所的に暖かいため,熱帯・亜熱帯植物が野外で越冬・生育するとのこと.ヤシ科ノウゼンカズラ科イヌビワ属マメ科などのコレクションが充実している.観察路を歩き,ラッパバナ(花)やオオバアメリカアサガオトウジュロが植栽されている.斑入り植物を集めた温室では,ツワブキマサキなどさまざまな植物の斑入りのものが展示されている.ヤシ科のエリアではワシントンヤシワシントンヤシモドキシンノウヤシなどが,ノウゼンカズラ科のエリアではタチノウゼンヒメノウゼンカズラがあった.ハイビスカスの温室ではハイビスカスの原種から園芸品種までさまざまなものがあった.中西先生からハイビスカス属の花粉の媒介などの説明があった.野外に出て,世界三大花木の一つノウゼンカズラ科キリモドキ(ジャガランダ)の説明.種子は翼があり,風で散布される.花期は6月中旬で花を見るには少し早かった.ブラジル国花のタブベイヤ・イペーTabebuia spp.を見て,ナツメヤシの説明を聴く.ナツメヤシの果実を乾かしたデーツを試食させて頂いた.園路を進み,メリケントキンソウ(逸出)やタイワンレンギョウホルトノキ(花),ショウジョウボク(ポインセチア),シマナンヨウスギヘツカニガキクチベニアロエアメリカデイゴハナチョウジ(花),アガベ・ホリダAgave horridaなどを見る.大温室前にヒロハザミアホソバウロコザミアが植栽されている.園路を進み,トックリヤシアフリカバオバブAdansonia digitataなどがある.温室内にヒスイカズラ(ジェイド・バイン,花)やアリストロキア・ギガンテアAristolochia gigantea,ビカクシダなどがある.ブドウカズラデコラゴムノキアカバナブラシマメルリマツリダイオウマツスラッシュマツを見る.中西先生が漂着したものを育てたタシロマメもある.ベコニアやランの温室を通り,再び野外に出る.ソウシジュキダチチョウセンアサガオ(エンゼルトランペット),トックリキワタオオバナソシンカアコウアカンサス(ハアザミ)Acanthus mollis,フトモモベンガルヤハズカズラなどがある.また,マルハチリュウビンタイなどの大型のシダ植物も野外に植栽されている.多くの植物が沖縄や東南アジアの植物園や街路樹で見られるもので,野外で生育しており,非常に暖かい気候であることが伺えた.園内のバスに載せて頂きビジターセンターまで帰り,15時20分ころ解散.各々,長崎市中心部の宿に向かった.

 6月7日.くもり.参加者11名.路線バスや自家用車で移動して,岩屋神社駐車場に9時30分に集合した.岩屋山はシーボルトが植物採集をした場所として知られており,状態の良い照葉樹林が残っている.山頂に向かって海抜が上がるに従って,シイからウラジロガシアカガシへと変化するとのこと.中西先生の説明の後,神社から山頂に向かう.岩屋神社周辺にはビワシイハゼノキコバンモチヌルデシリブカガシムベナンバンキブシなどがある.また,スギの樹幹には広島県では見られないヒメイサワゴケが着生していた.山道に入り,タイワンスゲイタビカズラサツマイナモリオオカグマオオカメモヅルタブノキオオバノハチジョウシダバクチノキマメヅタイズセンリョウテイカカズラ(花),シロダモイヌガシヤブニッケイツルコウジヤマビワオキナワシタキヅルホソバタブがある.次第に勾配がきつくなりはじめ,海抜300 m付近からウラジロガシが出はじめる.尾根に近づくとヘクソカズラルリミノキ(花),リンボクサザンカイスノキハマクサギ(花),カゴノキモッコク.海抜400 m付近でアカガシが出る.山頂で昼食と記念撮影.山頂は草原になっており,キンバイザサ(花)やテリハツルウメモドキシバスゲなどが見られる.中西先生からキンバイザサの花の位置とアリ散布の説明.12時15分頃から下山開始.ゴンズイミミズバイキジノオシダホラシノブヒヨドリジョウゴカタヒバヒメイタビがある.13時30分ころ駐車場に到着.特定外来生物のナルトサワギクが駐車場付近で見られる.参加者の無事が確認されたので解散した.広島ではあまり見られない植物もあり,皆満足して帰路についた.なお,岩屋山の植物については,篠原(2011,長崎県生物学会誌69巻)にまとめられているので参照されたい.今回の観察会では中西先生には大変お世話になりました.心より感謝申し上げます.

(H. Tsubota, T. Moroishi, Y. Inoue & S. Uchida記)

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