ヤマザクラ 宮島

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ヤマザクラCerasus jamasakura (Siebold ex Koidz.) H.Ohba, 廿日市市宮島町江之浦; Miyajima Isl., Hiroshima, SW Japan(撮影: 坪田博美.March 26, 2015)
江之浦のヤマザクラ(撮影: 坪田博美.Mar. 24, 2018)

ヤマザクラ Cerasus jamasakura (Siebold ex Koidz.) H.Ohba var. jamasakura(広島県廿日市市宮島)

解説

宮島のサクラ(坪田・中原-坪田 2020)より

ヤマザクラ Cerasus jamasakura (Siebold ex Koidz.) H.Ohba var. jamasakura:山桜。
野生種で、本州の宮城県以南から九州に自生する。広島県では島嶼部から沿岸部、中国山地にかけて広く分布。(2月下旬–)3月中旬–4月中旬(–4月下旬)に開花。花期は個体間の差が大きい。花は一重。花弁は白色。果実は5月中旬–6月上旬に成熟し、黒紫色になる。葉の展開と同時に開花し、新葉が赤みを帯びる。葉身は長楕円形で長さ約10 cm、小さな鋸歯がある。若葉では微毛があるが、葉の表面や裏面および萼片は無毛になり、葉の裏面は粉白色。蜜腺はいぼ状で、葉柄に付く。落葉高木で、成木になると20 m以上に達する。宮島島内に生育する大木としては、室浜砲台跡やあてのき浦のものが知られている(広島大学大学院理学研究科附属宮島自然植物実験所 2009、坪田ほか 2019)。宮島にも自生しており、島内の広い範囲で生育が確認できる。自然林でみられるが、遷移段階の比較的初期の明るい環境にあらわれる。
‘染井吉野’と異なり、開花するころには新芽が展開し始めている。また、カスミザクラよりも開花時期が早い。個体としてはおおよその花期は決まっているが、個体間の開花時期の差や地域差が大きく、種としてみると花期が長期にわたる。宮島では、明治時代以前から開花時期の早いヤマザクラが知られている。岡田・山野(1842)(福田 1973も参照)の『嚴島圖會』(三ノ廿五)の革籠崎(ごうごさき)の項目の次に、「早咲櫻 同所にあり 睦月の末既に花開きて香色ことに愛すべし」とある。睦月は現在の1月下旬から3月上旬頃に該当する時期になる。同じサクラと思われる記述が所(1897)にもあり、「革籠崎 七浦ノ外是處早櫻有雨水ヨリ十日ヲ過ス蕾ヲ破早薇アリ同時に拳ヲ擢ス」(84ページ)とある。雨水が現在の2月19日か20日頃であり、啓蟄(現在で言えば3月6から8日頃)よりも前と解釈できるので、おおよそ一致する。革籠崎は宮島の南西部にあるが、これらから考えて江戸時代後期に、2月末か3月はじめに開花するヤマザクラがあったことがわかる。また、マツ枯れが広がった時期(1970年頃)に現地で同じ時期に開花が確認されている(関、私信)。現在でも、例えば江ノ浦(よのうら)や宮島南西部などに、2月下旬–3月中旬に開花する個体がある。その一方で、4月下旬になっても開花している個体がある。また、開花期間が長い個体があることも知られており、宮島としてみるとかなりの期間開花がみられることになる。宮島のような狭い地域でも個体間の形態変異も大きいため、宮島も含む瀬戸内海のヤマザクラの集団についてはDNAを使った研究を行う必要がある。
宮島自然植物実験所周辺のヤマザクラについて、室浜砲台跡の上にあったヤマザクラは二重のものがあり当時標本を採集したとのこと(関、私信)。また、現在宮島自然植物実験所がある場所の山側にも大きなヤマザクラがあり、これらのヤマザクラは対岸の大野からもみることができ、農作業の目安にもなっていたとのこと(関および向井、私信)である。

宮島島内で観察できる場所

  • 宮島全島に広く分布

基本データ

和名・品種名
ヤマザクラ
読み
ヤマザクラ
開花期
3月中旬~4月中旬.個体毎の開花期のズレが大きい
白色
花弁数
一重
花の大きさ
サイズ・樹高
樹形
場所
宮島全島
本数

代表的な宮島のサクラの種類

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