ニホンジカ

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ニホンジカ(ホンシュウジカ)のオス(広島県廿日市市宮島町; 撮影: 池田誠慈, Mar. 4, 2001)

ニホンジカ Cervus nippon

分類

動物界 Animalia > 脊索動物門 Chordata > 脊椎動物亜門 Vertebrata > 哺乳綱 Mammalia > ウシ目(偶蹄目) Artiodactyla > シカ科 Cervidae > ニホンジカ Cervus nippon

解説

  • 日本全土に分布する植食動物植物食動物).複胃をもち,反芻を行う(反芻動物
  • ロシア東部のアムールからベトナムにかけて分布する.
  • ニホンジカは大陸に起源を持ち,母系の関係を知るうえで有効なミトコンドリアにコードされた遺伝子による系統解析では南日本のグループと北日本のグループの大きく2つのグループに分かれることが明らかになっている(Nagata et al. 1999, 玉手 2002, 永田 2005, 和田ほか 2010).また,マイクロサテライトの分析では,南北のグループ間で交流がすすんでいるが,生息環境の分断化や小集団化によって地域集団間で遺伝的分化が進んでいることがわかっている(Goodman et al. 2001).
  • 東日本の一部で,過去の人為的な移入によるものと推定される南日本集団由来の遺伝的特徴をもつ個体が確認されている(溝口ほか 2017,インターネットリソース).
    • 溝口ほか(2017)より引用:「1935年神奈川県丹沢山地札掛地区ではニホンジカの増殖を目的として県営丹沢鳥獣飼養所が開設され、宮城金華山の個体6頭、広島県宮産の2頭、奈良県春日大社産の6頭を飼育した歴史がある(飯村 1965; 田村 2013)」
  • ニホンジカの食性について,南北日本で異なることが知られている(Takatsuki 2009, 高槻 2015).南の集団ほど食性中のイネ科植物の割合が小さい傾向がある.

三浦(2008a)より

分布

ベトナムから極東アジア(中国東部,ロシア沿岸地方,台湾,朝鮮半島,日本)にかけて広く自然分布する.ヨーロッパ各地,ニュージーランド,アメリカには人為的に導入され,野生化している.日本産亜種は,北海道(エゾシカ),本州(ホンシュウジカ),四国,九州(キュウシュウジカ),淡路島・小豆島を含むいくつかの瀬戸内諸島,五島列島,馬毛島(マゲシカ),屋久島(ヤクシカ),種子島,対馬(ツシマジカ),慶良間列島(ケラマジカ,導入)などに分布する.ミトコンドリアDNAを用いた系統解析によれば,日本産亜種は北海道から兵庫県までの北日本グループと,それより西の地域(対馬,五島列島,屋久島を含む)の南日本グループに分けられる.

形態

中型のシカで,夏毛は茶色で白斑があり,冬毛は灰褐色である.黒い毛でふちどられた大きな白い尻斑をもつ.新生仔には細かい白斑がある.換毛期は5-6月,9-10月である.顕著な性的二型を示す.雄は角をもち,通常,1歳は1ポイント,2-3歳は2-3ポイント,4歳以上は4ポイントだが,大きさやポイント数は地域や亜種によって異なる.角は毎年生え換わり,成体の角長は30-80 cm.身体のサイズは,雄の方が大きく体重比にして1.5倍以上となる.また,サイズは亜種や生息地によって大きく異なる.最大はエゾジカ,最小はヤクシカである.体重(成体)は雄50-130 kg,雌25-80 kgで,季節によって増減がある.頭胴長(同)は雄90-190 cm,雌90-150 cm,肩高(同)は雄70-130 cm,雌60-110 cm,中足腺がある.眼下腺,蹄間腺は発達していない.

生態

生息環境は常緑広葉樹林,落葉広葉樹林,寒帯草原などが多様であるが,森林から完全に離れて生活することはなく,パッチ状に草原が入り込んだ森林地帯に多く生息する.積雪地域の個体群は雪を避け小規模な季節的移動を行う.落葉広葉樹林に生息するエゾジカやホンシュウジカは,イネ科草本,木の葉,堅果,ササ類などを季節に応じて採食する.とくにササ類は積雪地域の冬の主要な植物である.常緑広葉樹林に生息するキュウシュウジカなどは食性の季節的変化は少なく,1年を通じて木の葉を採食する.反芻胃をもつ.出産期は5月下旬-7月上旬で通常1仔を出産する.2仔出産の率は低い.交尾期は9月下旬-11月で,妊娠期間は約230日で,子どもの性による差はない.初産齢は2歳.最長寿命は雄15歳前後,雌20歳前後である.群れ生活を営むが,通常雄と雌は別々の群れを作る.娘は母親とともに母系的な群れを作るが,雄は1-2歳で母親のもとを離れる.一夫多妻制の社会で,雄の一部は交尾期にナワバリを作り,その中にハレムを形成する.雄は交尾期特有の音声を発し,マーキング,攻撃行動を行う.

その他

  • ケラマジカは国の天然記念物に指定されている.
  • シカのおじぎについて,催促的な行動であると報告がある(西山ほか 2018).
  • マゲシカについてはヤクシカと同時期に分岐した独自系統であることが報告されている(兼子ほか 2023
  • Ohdachi et al. (2015, p. 306)には,"Because sika are religiously important for Japan's native religion, Shinto, they are sometimes kept on the grounds of Shinto shrine, such as Koganeyama shrine in Miyagi Pref., Nara Park in Nara Pref. and Itsukushima shrine in Hiroshima Pref."と書かれている.この文では,宮島でも「神鹿」であることが示唆されているが,宮島のシカは野生動物の一種でしかなく,また同時に厳島神社の神の使いはカラスであってシカではない点に注意が必要である.なお,厳島神社のカラスに関する神事は今でも行われている.
  • Hayashi et al. (2023)は,日本列島のシカの成長について骨を用いて調査を行い,北海道と本州の東部のシカは成長が早く,屋久島などの島嶼部のシカは成長が遅いことを報告している.

観察

天然記念物・RDB

慣用名・英名・広島県方言

慣用名

  • シカ

英名

  • sika deer

広島県方言

ギャラリー

備考

参考文献

引用文献

インターネットリソース

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論文

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行政関連

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