日本人は古くからコケのもつ独特の,かつ微妙に変化する多彩な緑を愛でてきた.その緑は多くの歌にも詠まれ,わたしたちのこころの安らぎを与えてきた.自然のなかにあるコケだけでなく,それらを寺院や人家の庭園に取り込んでその落ち着いた緑の雰囲気を日本庭園の脇役に位置づけて鑑賞してきた.
日本庭園の美しさには,コケの存在が欠かせない.コケ(蘚苔類)は,日本庭園には欠かすことのできない構成要素として,地面,庭石,石灯籠,庭木などに生えて,古色,閑寂,清浄といった情緒をつくり出すのに有効な役割を果たしている.そして,その飾り気のない素朴な美しさは,庭を観たり,散策したりする人々に静かな歓びと安らぎを与えてくれる.
コケの美しい庭園は全国各地に点在している.そのうちのいくつかをここに紹介する.ここにあげた庭園は,これまでにコケ研究者によって紹介された全国にみられる代表的な苔庭が中心である.このほかにもさらに美しい庭がたくさんあると予想されるが,本ページを訪れられた皆さんにもそれらを紹介していただき,充実したデジタル苔庭の作庭にご協力いただき,本ページに充実できればと願っています.