「植物標本の整理と保存」の版間の差分

提供: 広島大学デジタル博物館
ナビゲーションに移動検索に移動
(同じ利用者による、間の4版が非表示)
4行目: 4行目:
  
 
== 7. 標本の小型化 ==
 
== 7. 標本の小型化 ==
このことについて,関・広藤(1980)の提言がある.以下に要約し,私見を交えて述べる.
+
このことについて,[[関・広藤_1980|関・広藤(1980)]]の提言がある.以下に要約し,私見を交えて述べる.
  
 
標本を作成する目的は,1) 分類学的研究,2) 教育用,3) 個人同定用・学習用,4) 生態調査・細胞学・生理学・成分研究の証拠標本などである.この中で2)-4)の場合は,現行の標本の半分以下のサイズでもよい.B5版だと実体顕微鏡の下で自由に比較できる.
 
標本を作成する目的は,1) 分類学的研究,2) 教育用,3) 個人同定用・学習用,4) 生態調査・細胞学・生理学・成分研究の証拠標本などである.この中で2)-4)の場合は,現行の標本の半分以下のサイズでもよい.B5版だと実体顕微鏡の下で自由に比較できる.
  
著者らはスクラップブックに貼ることをすすめているが,むしろクリヤーホルダーがよい(バインダー式だとなおよい).標本を自由に並べかえできるからである.この場合も防虫には気をつける.
+
著者らはスクラップブックに貼ることをすすめているが,むしろクリヤーホルダーがよい(バインダー式だとなおよい).標本を自由に並べかえできるからである.この場合も防虫には気をつける.
  
 
標本を取るに際しては,葉のつき方,葉柄の基部,托葉などを観察するため,枝や茎についた状態が必要である.若年枝と老年枝とで葉形が異なるもの,陽葉と陰葉で異なるものは,注意して採集する.
 
標本を取るに際しては,葉のつき方,葉柄の基部,托葉などを観察するため,枝や茎についた状態が必要である.若年枝と老年枝とで葉形が異なるもの,陽葉と陰葉で異なるものは,注意して採集する.
30行目: 30行目:
 
=== 参考文献 ===
 
=== 参考文献 ===
 
# 北村四郎 (1957) 乾燥標本の作り方と保存. 原色日本植物図鑑(I) pp. 241-245.
 
# 北村四郎 (1957) 乾燥標本の作り方と保存. 原色日本植物図鑑(I) pp. 241-245.
# 関 太郎・広藤繁美 (1979) 植物の採集と標本の作り方1. 維管束植物. 広島大学生物学会誌 45: 39-42.
+
# [[関・広藤_1979|関 太郎・広藤繁美1979植物の採集と標本の作り方1, 維管束植物. 広島大学生物学会誌 45: 39-42.]]
# 関 太郎・広藤繁美 (1980) 植物の採集と標本の作り方2. 標本の小型化と特殊標本. 広島大学生物学会誌 46: 27-30.
+
# [[関・広藤_1980|関 太郎・広藤繁美1980植物の採集と標本の作り方2, 標本の小型化と特殊標本. 広島大学生物学会誌 46: 27-30.]]
 +
 
 +
==補足==
 +
国立科学博物館(2003)には,植物も含めた生物の標本について解説がある.
 +
 
 +
===引用文献===
 +
国立科学博物館(編).  2003.  標本学, 自然史標本の収集と管理.  vii + 250 pp.
 +
 
  
 
----
 
----

2020年9月21日 (月) 22:35時点における版

植物標本の整理と保存

6. 整理と保存

台紙に貼った,あるいは新聞紙にはさんだ標本は,厚い模造紙の二つ折りのカバー(属カバー,Genusカバー)の中に入れて整理する.カバーの大きさは,二つ折りで標本台紙より縦,横とも2 cmほど大きめがよい.表右下には属名を,必要なら科名も併記しておく.1つのカバーに入れる標本数は,標本の厚さにもよるが,10-20枚位である.これを分類体系にしたがって科を配列し(日本の多くの公共標本館はエングラーの体系を採用),科の中では属を学名のアルファベット順に,属では種小名のアルファベット順にならべる.整理ができたら分類群ごとに,ポリ袋や茶箱に保存する.保存時には,防虫剤(樟脳など)を入れておくと虫がつかなくてよい.

7. 標本の小型化

このことについて,関・広藤(1980)の提言がある.以下に要約し,私見を交えて述べる.

標本を作成する目的は,1) 分類学的研究,2) 教育用,3) 個人同定用・学習用,4) 生態調査・細胞学・生理学・成分研究の証拠標本などである.この中で2)-4)の場合は,現行の標本の半分以下のサイズでもよい.B5版だと実体顕微鏡の下で自由に比較できる.

著者らはスクラップブックに貼ることをすすめているが,むしろクリヤーホルダーがよい(バインダー式だとなおよい).標本を自由に並べかえできるからである.この場合も防虫には気をつける.

標本を取るに際しては,葉のつき方,葉柄の基部,托葉などを観察するため,枝や茎についた状態が必要である.若年枝と老年枝とで葉形が異なるもの,陽葉と陰葉で異なるものは,注意して採集する.

標本を作るには,漫画本の利用が考えられる.水分をよく吸収するからである.はじめの4,5日は毎日漫画本を取りかえて,はさみ直しながら形を整える.重石には,大きな辞典を重ねたもの,ペットボトルに水を入れたものを用いればよい.

8. 図鑑・参考文献など

植物を調べるとき,参考になる本と文献をあげる.

図鑑

  1. 牧野富太郎 (1961) 牧野新日本植物図鑑. 北隆館.
  2. 北村四郎 他 (1957-) 原色日本植物図鑑 (全5巻). 保育社.
  3. 佐竹義輔 他 (1981-) 日本の野生植物 (全5巻). 平凡社.
  4. 岩槻邦男 他 (1992) 日本の野生植物 シダ (全1巻). 平凡社.
  5. 岩月善之助 他 (2001) 日本の野生植物 コケ (全1巻). 平凡社.
  6. 清水建美 他 (2003) 日本の帰化植物 (全1巻). 平凡社.

この他,いろいろなよい図鑑があるが,ある程度植物がわかるようになってから購入するのがよいだろう.

参考文献

  1. 北村四郎 (1957) 乾燥標本の作り方と保存. 原色日本植物図鑑(I) pp. 241-245.
  2. 関 太郎・広藤繁美. 1979. 植物の採集と標本の作り方1, 維管束植物. 広島大学生物学会誌 45: 39-42.
  3. 関 太郎・広藤繁美. 1980. 植物の採集と標本の作り方2, 標本の小型化と特殊標本. 広島大学生物学会誌 46: 27-30.

補足

国立科学博物館(2003)には,植物も含めた生物の標本について解説がある.

引用文献

国立科学博物館(編). 2003. 標本学, 自然史標本の収集と管理. vii + 250 pp.



野外観察・調査 にもどる