宮島/宮島の植物と植生に関する研究

宮島の植物と植生に関する研究

 
図1.北側から望む宮島.白糸川上流の土石流発生前の様子.(広島県廿日市市宮島町; 著作: 宮島自然植物実験所 / 広島大学デジタル自然史博物館 坪田博美.2004年10月22日撮影; Miyajima Island, Hiroshima Prefecture, SW Japan; October 22, 2004)
 
図2.野外調査の様子.(2017年10月5日撮影)
 
図3.絶滅危惧種モロコシソウの域外保全実験.広島県内では宮島だけで生育が確認されているが,宮島でも減少傾向が続いている.(2017年6月20日撮影)
 
図4.逸出した中国原産のナンキンハゼ.ニホンジカが好まないため宮島島内で近年目立つようになった.(2017年11月18日撮影)

 宮島といえば厳島神社や朱の大鳥居などが思い浮かびますが,生物学的には植物を含む自然も外すことができません。宮島は広島県の約0.4 %の面積ですが,広島県で記録された植物種の約1/3が報告されています。また,国の天然記念物である瀰山原始林をはじめ,人為的な影響が少なく状態の良い森林が残っています。この森林は西南日本の温帯域を代表するもので,瀬戸内海沿岸では大変貴重です。宮島の自然は多くの研究者を魅了し,古くから研究対象とされています。例えば,大正期には植物の分類体系の基礎を作った著名な学者アドルフ・エングラー博士が宮島を訪れ,大いに感激したという逸話があります。広島大学は前身の広島高等師範学校時代から,宮島の自然について研究を行っています。1970年前後に総合調査が行われ,宮島の自然の理解が進みました。宮島に関する古い絵地図や森林と地形との関係に関する研究から,人の手の関与も示唆されています。広島大学大学院理学研究科附属宮島自然植物実験所(現,統合生命科学研究科附属宮島自然植物実験所)は,1964年の設置以来,宮島のすぐれた自然を活用して植物学の教育・研究を行っています。現在,本実験所では宮島の自然や島嶼という立地環境を生かして,島の生物学に関わる研究を行っています。植物のフロラ調査や系統・分類,植生の変化などの基礎研究から,希少種の保全や緑化事業,移入種対策,土石流跡地の調査など宮島の環境を保全するための研究まで,基礎生物学をベースに応用分野も研究対象にしています。島という環境を通して,ダーウィンは進化という概念に至りました.同時に宮島は日本の縮図ともいえる場所です.宮島を研究することで島国としての日本はもちろん,さまざまな隔離環境下で起こる生物学的な現象が理解できるのです。

(広島大学環境報告書2018に掲載したものを改変)

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