宮島のシカ

提供: 広島大学デジタル博物館
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宮島のシカ

宮島の環境

宮島のシカの日常

宮島のシカの食事

  • 4月はサクラを始めいろいろな植物が開花します.シカは落ちてきた花弁を好んで食べます.
  • 4月から5月にかけて,常緑樹は新しい葉を展開させ,古い葉を落とします.落ちたばかりの新鮮な落葉をシカは好んで食べます.
  • 6月から7月にかけて,宮島ではヤマモモが熟します.シカは熟れて落ちたヤマモモをまるごと食べます.この時期のシカの糞には多くのヤマモモの核が含まれています.

餌やりの影響

シカへの餌やりにより,シカへの影響やシカが棲む自然環境への影響,衛生面への影響などがみられるようになります.宮島は全島が国立公園ですので「国立公園の利用上のマナー」を守ることが前提としてあげられます.この中でも野生動物への餌やり禁止が求められています.

シカへの影響

シカの個体数と環境への影響

どのような生態系にも,継続的に生活できる生物の最大量があります.これを環境収容力と呼びます.環境収容力を超えて生態系は維持できません.

餌やりにより環境収容力を超えた個体数まで増加することがあります.餌をやると自然の状態に比べて栄養状態が良くなり,妊娠する個体が増える傾向があることが知られています.産まれてくる個体と死んでいく個体のバランスでその集団の個体数は決まります.死んでいく個体の数は自然界では普通大きく変わることはありませんので,産まれてくる個体が多くなると,その集団の個体数は増加します.

個体数が増えると,その集団が利用する環境,つまり周辺の生態系が次第に維持できなくなっていきます.

シカの健康への影響

シカは反芻動物です.反芻動物は胃の中の微生物の力をかりて植物を消化・発酵することで,エネルギーやタンパク質などを得ています.自然界にない食物を食べてしまうと,共生する微生物が影響を受け,食べた物を消化できなくなってしまいます.

シカの糞は黒豆のような形をしているのが普通です.しかし,餌やりが行われてる場所の周辺では,大きな塊になったり水分の多い状態の糞(下痢や軟便など)が多くみられます.実際,シカの腸内の状態を知る上で参考になる糞に含まれるバクテリアを調査した結果,乳酸菌などのバクテリアが減少していることがわかっています.これらは餌やりの影響と考えられ,シカの健康を考えると餌やりは望ましいとは言えない根拠の一つです.

餌やりにより人が与えるものの味を覚えてしまった個体は,人が持っているものなどにも興味を示すようになります.また,もともと人が持っていたゴミも誤って食べてしまうようになります.この結果,ゴミを食べてしまい,消化されないプラスチックは胃の中に蓄積します.死んだ個体を解剖すると,プラごみの塊を持っているものが多く,シカの健康に悪い影響を与えていることがわかります.

シカの遺伝的多様性に関する影響

自然環境への影響

多くの生物は地域毎に遺伝的な違いがあります.そのため,人の手による安易な移動は遺伝的撹乱につながります.とくに宮島のような場所では,他所からのどんぐり持ち込みは行ってはいけません.そもそも宮島では,シカが食べるに十分などんぐりがたくさん落ちていますので持ち込みは不要です.

シカだけでなくイノシシやカラス,場合によってはタヌキや野鳥などへの餌付けにもなっています.これらの動物もシカの場合と同様に高密度になることでさまざまな悪影響が出ることが知られています.例えば,タヌキが集まると他の個体に疥癬が広がって死んでしまう個体も出てきます.あるいは,鳥インフルエンザなどの拡大の危険性もあります.

衛生面への影響

シカなどの野生動物とは適切な距離を保つ必要がありますが,その理由の一つに人獣共通感染症の存在があげられます.人獣共通感染症は人と動物が共通して感染することで発症する病気です.動物から人あるいは人から動物に感染することがあります.餌やりは人と野生動物の間の適切な距離を保つことが難しくなるため,宮島では禁止されています.

人獣共通感染症の感染にはマダニ類など他の生物が媒介するものもあることが知られています.マダニ類のすべてが危険というわけではありませんが,マダニ類は昔は知られていなかった病原体をもっていることがわかってきています.重症熱性血小板減少症候群(SFTS)や日本紅斑熱(JSF),オズウイルス感染症などを媒介します.SFTSやJSFについては広島県内でも発症例があります.これらの感染症ともったマダニは外からはわかりませんが,マダニに刺されないのが重要です.この点からも野生動物と適切な距離を保つことが大切と言えます.

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