トサムラサキ 宮島の植物と自然
トサムラサキ Callicarpa shikokiana Makino
分類
クマツヅラ科 Verbenaceae,ムラサキシキブ属 Callicarpa
解説
高さ3-5 mになる落葉低木.葉は対生し,葉の先端が尾状に長く伸び,葉の両面に腺点(せんてん)があり,脈上に短毛が生え,花序の柄が葉柄よりも長いなどの特徴がある.花期は6月下旬-7月中旬.花は小さく白-淡紅紫色で,集散花序(しゅうさんかじょ)を腋生(えきせい)する.秋に果実が成熟し,直径約2 mmの球形で,鮮やかな紫色になる.よく果実をつけた個体では,枝にびっしりと果実がつく.別名ヤクシマコムラサキ,シコクミムラサキ.近畿以西の西日本の暖地に稀に産するが,広島県では宮島だけで生育が確認されている.宮島でも個体数はあまり多くなく,それほど目にする植物ではない.日当たりの良い明るい場所,とくに谷筋のやや湿ったところに生育している.なかでも,かや谷や弥山周辺で大きな株が見られ,大きなものでは高さ7 m程度ある.比較的稀な植物で,環境省RDBでは絶滅危惧II類(ぜつめつきぐにるい)(VU),広島県RDBでは準絶滅危惧(じゅんぜつめつきぐ)(NT).属名のCallicarpa は「美しい果実」という意味.生け花や庭木に使うムラサキシキブや,宮島でも見られるコムラサキやヤブムラサキも同じ属.本種は,牧野富太郎(まきのとみたろう)が高知県からはじめて報告した.井波(1981)の「広島県植物図選I」に宮島の材料から描いた図が掲載されている.宮島では,シロバナトサムラサキCallicarpa shikokiana f. albiflora Yamazaki に相当すると考えられる花の色が白色に近い個体がよく見つかる.
「宮島の植物と自然」内のページ
「宮島の植物と自然」(広島大学大学院理学研究科附属宮島自然植物実験所 2009)内で掲載されているページ.
- 52-53 pp.