クスノキ 宮島の植物と自然
クスノキ Cinnamomum camphora (L.) J.Presl
分類
クスノキ科 Lauraceae,ニッケイ属 Cinnamomum
解説
高さ5-25 mになる常緑高木.葉は対生で,光沢があり,全縁で無毛.葉脈(ようみゃく)が大きく3本に分かれ(三行脈(さんこうみゃく)),脈の分岐点にダニ室と呼ばれるふくらみがある.新芽が展開した後,初夏に古い葉が紅葉して落葉する.花期は5月中-6月下.花は小さく目立たず,白色,萼(がく)と花弁の区別が明瞭でなく花被片(かひへん)が6枚.雄しべは9本あり,さらに葯(やく)を欠いた仮雄しべがある.内側の雄しべの基部に濃黄色の腺体(せんたい)がある.果実は晩秋に熟し,球形で,黒く光沢があり,中に種子が一つ入っている.鳥はよく食べるが,成分に含まれる樟脳(しょうのう)は飲み込むと有毒であるため,食用には適さない.関東以西の本州,四国,九州,琉球,朝鮮半島,台湾,中国,ベトナムに分布.クスノキは本来日本には自生せず,中国を原産とするという説もあるが,宮島では海岸に近い堆積地形(たいせきちけい)の自然林に多く見られる.比較的身近な植物で,広島市の木にもなっている.また,街の騒音を消すため,街路樹として利用されることが多い.耐水性が高いため,宮島の厳島神社の大鳥居(おおとりい)の柱もクスノキで作られている.クスノキの材や葉からは樟脳が採れるため古くから利用されてきた.クスノキと読ませる「楠」という漢字は,中国ではタブノキを意味する.種小名は樟脳(カンフルcamphre)の意味.花の構造などからクスノキの仲間は被子植物の中で原始的な群とされてきた.
「宮島の植物と自然」内のページ
「宮島の植物と自然」(広島大学大学院理学研究科附属宮島自然植物実験所 2009)内で掲載されているページ.
- 76-77 pp.