オオミズゴケ 宮島の植物と自然

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オオミズゴケ Sphagnum palustre L.

分類

ミズゴケ科 Sphagnaceae,ミズゴケ属 Sphagnum

解説

 茎(くき)の長さが10 cm以上になる大型の蘚類(せんるい).茎には節(ふし)があり,その節から数本の枝が出る.茎の頂端(ちょうたん)付近の節間(せっかん)は密(みつ)であり,枝が密生(みっせい)し,成長とともに節間が伸張する.茎に下垂(かすい)する枝としない枝がある.茎に付く葉(茎葉(けいよう))と枝に付く葉(枝葉(しよう))の形や大きさが異なる.茎葉は舌形で,長さ2 mm程度,先端はややささくれる.枝葉は舟形(ふながた) に凹(くぼ)む広楕円形(だえんけい)で,長さ1.5-3 mm,葉縁に細かい歯がある.枝に鱗片(りんぺん)状に並び,枝の先端に行くほど小さくなる.葉は2種類の細胞からなり,緑色で光合成をする生きた細胞である葉緑(ようりょく)細胞と,細胞質が抜けて水を蓄える透明(とうめい)細胞がある.葉緑細胞は細長く(線形で)網目状につながる.透明細胞は大型で長い平行四辺形,孔(あな)をもつ.枝葉の透明細胞には数本の肥厚(ひこう)(壁が厚くなった部分)と数個の孔がある.枝葉の横断面を見ると,丸い透明細胞に挟まれた葉緑細胞は丸みのある二等辺三角形.三角形の底辺は葉の腹面(枝の軸と接する面)になる.枝葉の葉緑細胞と接する透明細胞の側壁面(そくへきめん)は平滑(へいかつ).胞子体(ほうしたい)は稀(まれ)で蒴歯(さくし)を欠き,黒褐色(こっかっしょく).栄養生殖(えいようせいしょく)を行う.世界に広く分布し,日本では北海道から九州に分布.一般に,山地の湿った地上や中間湿原に白緑色の大きな群落をつくる.広島県のような花崗岩(かこうがん)地域ではミズゴケ類の中で最も普通に見られる種.宮島では谷筋の平坦部(へいたんぶ)や海岸に近い湿った岩壁(がんぺき)に生育する.透明細胞には水が出入りする孔があり,水を蓄えることができる.脱脂綿(だっしめん)の代わりに利用されたこともある.園芸用途で利用されるが,湿地の荒廃(こうはい)につながるため野外での採集は慎(つつし)みたい.環境省RDB では絶滅危惧I類(ぜつめつきぐいちるい)(CR + EN).

「宮島の植物と自然」内のページ

「宮島の植物と自然」(広島大学大学院理学研究科附属宮島自然植物実験所 2009)内で掲載されているページ.

  • 124-125 pp.

文献(引用)


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