「マルバノキ」の版間の差分
(→解説) |
|||
(2人の利用者による、間の8版が非表示) | |||
1行目: | 1行目: | ||
− | + | [https://www.hiroshima-u.ac.jp/index-j.html 広島大学] > [https://www.digital-museum.hiroshima-u.ac.jp/ 広島大学デジタルミュージアム] > [https://www.digital-museum.hiroshima-u.ac.jp/~museum/ デジタル自然史博物館] > [[植物メインページ]] > [[郷土の植物|郷土の植物]] > [[郷土の植物/維管束植物|維管束植物]] > [[マルバノキ]] | [[広島県の植物図鑑]] / [[広島県植物誌/和名順/ブロック|和名順]] | |
− | [[ファイル:20081019マルバノキ_廿日市市権現山.jpg| | + | [[ファイル:20081019マルバノキ_廿日市市権現山.jpg|250px|thumb|right|マルバノキ(ベニマンサク)(広島県廿日市市大野 権現山; 撮影: 垰田 宏, Oct. 19, 2008)]] |
+ | [[ファイル:20170222マルバノキ冬芽_東広島市鏡山_池田撮影_IMG_70D_1143.JPG|250px|thumb|right|マルバノキ(ベニマンサク)の冬芽(東広島植物園; 撮影: 池田誠慈, Feb. 22, 2017)]] | ||
− | = マルバノキ(ベニマンサク) ''Disanthus | + | =マルバノキ(ベニマンサク) ''Disanthus cercidifolius'' Maxim.= |
− | == シノニム == | + | ==シノニム== |
− | === その他 === | + | ===その他=== |
− | == 分類 == | + | ==分類== |
+ | 維管束植物門 Tracheophyta | ||
+ | > 種子植物亜門 Spermatophytina | ||
+ | > 被子植物上綱 Angiospermae | ||
+ | > モクレン綱 Magnoliopsida | ||
+ | > ユキノシタ上目 Saxifraganae | ||
+ | > ユキノシタ目 Saxifragales | ||
+ | > [[マンサク科|マンサク科 Hamamelidaceae]] | ||
+ | > [[マルバノキ属|マルバノキ属 ''Disanthus'']] | ||
+ | ===旧分類=== | ||
種子植物門 Spermatophyta | 種子植物門 Spermatophyta | ||
> 被子植物亜門 Angiospermae | > 被子植物亜門 Angiospermae | ||
15行目: | 25行目: | ||
> [[マルバノキ属|マルバノキ属 ''Disanthus'']] | > [[マルバノキ属|マルバノキ属 ''Disanthus'']] | ||
− | == 解説== | + | ==解説== |
− | * マンサク科 Hamamelidaceae マルバノキ属 ''Disanthus'' Maxim. の高さ2-4 m程度になる落葉低木. | + | *マンサク科 Hamamelidaceae マルバノキ属 ''Disanthus'' Maxim. の高さ2-4 m程度になる落葉低木. |
− | * 植物体は全体がほぼ無毛. | + | *植物体は全体がほぼ無毛. |
− | * 葉は全縁で,ハート形(円心形).掌状脈をもつ. | + | *葉は全縁で,ハート形(円心形).掌状脈をもつ. |
− | * 托葉は早く落ちる. | + | *托葉は早く落ちる. |
− | * 萼の基部に苞葉が2枚あり,軟毛が密生する. | + | *萼の基部に苞葉が2枚あり,軟毛が密生する. |
− | * 秋に紅葉し,同じ時期に開花する. | + | *秋に紅葉し,同じ時期に開花する. |
− | * 花は紅色,両生花で,直径1 cmほどの2つの花が背中合わせにつく.花はドクダミ臭がする.花弁は5枚.花柱は太短で2裂する. | + | *花は紅色,両生花で,直径1 cmほどの2つの花が背中合わせにつく.花はドクダミ臭がする.花弁は5枚.花柱は太短で2裂する. |
− | * 種子は,冬期に寒さにあってはじめて発芽する. | + | *種子は,冬期に寒さにあってはじめて発芽する. |
− | * 中国大陸中部に変種のvar. ''longipes'' T.H.Changが分布する. | + | *中国大陸中部に変種のvar. ''longipes'' T.H.Changが分布する. |
− | * 最終氷期の残存種relict species(遺存種とも呼ばれ,かつては広い範囲に分布していたが,現在では限られた地域でしか見られない種)と考えられる. | + | *最終氷期の残存種relict species(遺存種とも呼ばれ,かつては広い範囲に分布していたが,現在では限られた地域でしか見られない種)と考えられる. |
− | * 昭和7年(1932),警固屋在住の平川一秋氏(広島山岳会会員)により大野村帆柱峠(現在大野町自然観察の森の駐車場付近)で採集され,広島大学教育学部の佐藤月ニ先生によりマルバノキと確認.それまで、 本州中部,近畿の一部と高知県にしか知られていなかったので,広島県の飛び離れた分布は画期的な発見であった. | + | *昭和7年(1932),警固屋在住の平川一秋氏(広島山岳会会員)により大野村帆柱峠(現在大野町自然観察の森の駐車場付近)で採集され,広島大学教育学部の佐藤月ニ先生によりマルバノキと確認.それまで、 本州中部,近畿の一部と高知県にしか知られていなかったので,広島県の飛び離れた分布は画期的な発見であった. |
− | * 環境省RL(2007)では指定されていないが,広島県RDB(2003)では準絶滅危惧に指定.園芸店ではよく売られている. | + | *環境省RL(2007)では指定されていないが,広島県RDB(2003)では準絶滅危惧に指定.園芸店ではよく売られている. |
− | * 属名の''Disanthus''はギリシャ語のdi(dis) 「二重の」,anthos「花」から. | + | *属名の''Disanthus''はギリシャ語のdi(dis) 「二重の」,anthos「花」から. |
− | * | + | *種小名はハナズオウ属''Cercis''の葉に似たという意味. |
− | * 昭和12年(1937)に広島県の天然記念物「ベニマンサク群落(ベニマンサク軍叢)」に指定. | + | *昭和12年(1937)に広島県の天然記念物「ベニマンサク群落(ベニマンサク軍叢)」に指定. |
+ | |||
+ | ===花期=== | ||
+ | *花期は10-11月. | ||
+ | |||
+ | ==分布・産地・天然記念物== | ||
+ | ===分布=== | ||
+ | *中部以西の本州(富山,長野,岐阜,愛知,三重,滋賀,岡山,広島),四国(高知)の日当たりのよい岩地や,日当たりのよい山地の谷間や湖畔に生育する. | ||
+ | *広島県では,[[おおの自然観察の森|大野町の自然観察の森]]や渡瀬ダム湖の周辺(佐伯町の一部を含む)に分布し,個体数は多く,生育も良好である.渓谷に沿ったやや湿った森林の林縁部に多い. | ||
− | === | + | ===産地=== |
− | * | + | *[[おおの自然観察の森|廿日市市おおの自然観察の森]] |
− | + | ===天然記念物 === | |
− | + | *県天「ベニマンサク群叢」(大野町・佐伯町) | |
− | |||
− | |||
− | |||
− | === 天然記念物 === | ||
− | * | ||
− | == 標本 == | + | ==標本== |
− | * 大野町自然観察の森(yy-5181),佐伯町渡瀬ダム湖(ts-911025) | + | *大野町自然観察の森(yy-5181),佐伯町渡瀬ダム湖(ts-911025) |
− | == 慣用名・英名・広島県方言 == | + | ==慣用名・英名・広島県方言== |
− | === 慣用名 === | + | ===慣用名=== |
*[[ベニマンサク]] | *[[ベニマンサク]] | ||
− | === 英名 === | + | ===英名=== |
− | === 広島県方言 === | + | ===広島県方言=== |
− | == 備考== | + | ==備考== |
− | * 広島県RDBカテゴリ: 準絶滅危惧(NT) | + | *広島県RDBカテゴリ: 準絶滅危惧(NT) |
− | * 環境庁コード: 22530 | + | *環境庁コード: 22530 |
− | * 県RDB | + | *県RDB |
− | == 文献(出典)== | + | ==文献(出典)== |
− | * | + | *[[佐藤_1932|佐藤(1932)]],広島県(1933),牧野(1934),[[井波_1981|井波(1981)]],[[土井_1983|土井(1983)]],[[広島県_1995|広島県(1995)]],[[広島大学理学部附属宮島自然植物実験所・比婆科学教育振興会(1997)|広島大学理学部附属宮島自然植物実験所・比婆科学教育振興会(1997)]] |
---- | ---- | ||
− | [ | + | [https://www.hiroshima-u.ac.jp/index-j.html 広島大学] > [https://www.digital-museum.hiroshima-u.ac.jp/ 広島大学デジタルミュージアム] > [https://www.digital-museum.hiroshima-u.ac.jp/~museum/ デジタル自然史博物館] > [[植物メインページ]] > [[郷土の植物|郷土の植物]] > [[郷土の植物/維管束植物|維管束植物]] > [[マルバノキ]] | [[広島県の植物図鑑]] / [[広島県植物誌/和名順/ブロック|和名順]] |
[[Category:植物]] | [[Category:植物]] | ||
69行目: | 82行目: | ||
[[Category:維管束植物]] | [[Category:維管束植物]] | ||
[[Category:被子植物]] | [[Category:被子植物]] | ||
+ | [[Category:ユキノシタ目]] | ||
[[Category:マンサク科]] | [[Category:マンサク科]] | ||
+ | [[Category:Hamamelidaceae]] | ||
+ | [[Category:APG]] | ||
+ | [[Category:標準和名]] |
2023年11月30日 (木) 13:01時点における最新版
広島大学 > 広島大学デジタルミュージアム > デジタル自然史博物館 > 植物メインページ > 郷土の植物 > 維管束植物 > マルバノキ | 広島県の植物図鑑 / 和名順
マルバノキ(ベニマンサク) Disanthus cercidifolius Maxim.
シノニム
その他
分類
維管束植物門 Tracheophyta > 種子植物亜門 Spermatophytina > 被子植物上綱 Angiospermae > モクレン綱 Magnoliopsida > ユキノシタ上目 Saxifraganae > ユキノシタ目 Saxifragales > マンサク科 Hamamelidaceae > マルバノキ属 Disanthus
旧分類
種子植物門 Spermatophyta > 被子植物亜門 Angiospermae > 双子葉植物綱 Dicotyledoneae > マンサク科 Hamamelidaceae > マルバノキ属 Disanthus
解説
- マンサク科 Hamamelidaceae マルバノキ属 Disanthus Maxim. の高さ2-4 m程度になる落葉低木.
- 植物体は全体がほぼ無毛.
- 葉は全縁で,ハート形(円心形).掌状脈をもつ.
- 托葉は早く落ちる.
- 萼の基部に苞葉が2枚あり,軟毛が密生する.
- 秋に紅葉し,同じ時期に開花する.
- 花は紅色,両生花で,直径1 cmほどの2つの花が背中合わせにつく.花はドクダミ臭がする.花弁は5枚.花柱は太短で2裂する.
- 種子は,冬期に寒さにあってはじめて発芽する.
- 中国大陸中部に変種のvar. longipes T.H.Changが分布する.
- 最終氷期の残存種relict species(遺存種とも呼ばれ,かつては広い範囲に分布していたが,現在では限られた地域でしか見られない種)と考えられる.
- 昭和7年(1932),警固屋在住の平川一秋氏(広島山岳会会員)により大野村帆柱峠(現在大野町自然観察の森の駐車場付近)で採集され,広島大学教育学部の佐藤月ニ先生によりマルバノキと確認.それまで、 本州中部,近畿の一部と高知県にしか知られていなかったので,広島県の飛び離れた分布は画期的な発見であった.
- 環境省RL(2007)では指定されていないが,広島県RDB(2003)では準絶滅危惧に指定.園芸店ではよく売られている.
- 属名のDisanthusはギリシャ語のdi(dis) 「二重の」,anthos「花」から.
- 種小名はハナズオウ属Cercisの葉に似たという意味.
- 昭和12年(1937)に広島県の天然記念物「ベニマンサク群落(ベニマンサク軍叢)」に指定.
花期
- 花期は10-11月.
分布・産地・天然記念物
分布
- 中部以西の本州(富山,長野,岐阜,愛知,三重,滋賀,岡山,広島),四国(高知)の日当たりのよい岩地や,日当たりのよい山地の谷間や湖畔に生育する.
- 広島県では,大野町の自然観察の森や渡瀬ダム湖の周辺(佐伯町の一部を含む)に分布し,個体数は多く,生育も良好である.渓谷に沿ったやや湿った森林の林縁部に多い.
産地
天然記念物
- 県天「ベニマンサク群叢」(大野町・佐伯町)
標本
- 大野町自然観察の森(yy-5181),佐伯町渡瀬ダム湖(ts-911025)
慣用名・英名・広島県方言
慣用名
英名
広島県方言
備考
- 広島県RDBカテゴリ: 準絶滅危惧(NT)
- 環境庁コード: 22530
- 県RDB
文献(出典)
- 佐藤(1932),広島県(1933),牧野(1934),井波(1981),土井(1983),広島県(1995),広島大学理学部附属宮島自然植物実験所・比婆科学教育振興会(1997)
広島大学 > 広島大学デジタルミュージアム > デジタル自然史博物館 > 植物メインページ > 郷土の植物 > 維管束植物 > マルバノキ | 広島県の植物図鑑 / 和名順