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===<正義>の生物学―生物多様性を保全する理由―===
 
===<正義>の生物学―生物多様性を保全する理由―===
 
山田俊弘(広島大学大学院統合生命科学研究科)<br>
 
山田俊弘(広島大学大学院統合生命科学研究科)<br>
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演者は、2007年から広島大学で担当してきた講義、「保全生物学」の中で、多くの生き物が絶滅しかけている。私たちは彼らを絶滅から守るべきだろうか?それとも特別なことをする必要などないのだろうか? どちらかを理由とともに選べ。という問いを学生に投げかけ、学生とともにその答えを模索してきた。そして、探し当てた問いへの(ひとつの)解答を2020年、『<正義>の生物学 トキやパンダを絶滅から守るべきか』にまとめ、上梓した。<br>
 
演者は、2007年から広島大学で担当してきた講義、「保全生物学」の中で、多くの生き物が絶滅しかけている。私たちは彼らを絶滅から守るべきだろうか?それとも特別なことをする必要などないのだろうか? どちらかを理由とともに選べ。という問いを学生に投げかけ、学生とともにその答えを模索してきた。そして、探し当てた問いへの(ひとつの)解答を2020年、『<正義>の生物学 トキやパンダを絶滅から守るべきか』にまとめ、上梓した。<br>
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演者がたどり着いた答えは、生物多様性の保全は必要であり、その理由は、(1)生き物の恵み(特に供給サービス)を得るため、(2)生き物の恵み(特に基盤サービス)を得るため、(3)それが正しい行いだから、という3つだった。『<正義>の生物学』では、これら3つについて解説したが、3つの理由のそれぞれがとても大きなテーマなため、本シンポジウムですべてを紹介することができない。そこで本シンポジウムでは、3つ目の理由である、「それが正しい行いだから」に注目し、この考えを紹介したい。<br>
 
演者がたどり着いた答えは、生物多様性の保全は必要であり、その理由は、(1)生き物の恵み(特に供給サービス)を得るため、(2)生き物の恵み(特に基盤サービス)を得るため、(3)それが正しい行いだから、という3つだった。『<正義>の生物学』では、これら3つについて解説したが、3つの理由のそれぞれがとても大きなテーマなため、本シンポジウムですべてを紹介することができない。そこで本シンポジウムでは、3つ目の理由である、「それが正しい行いだから」に注目し、この考えを紹介したい。<br>
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生物多様性の保全が正しい行いだと考える立場は、命の重さを尊重する。ここでいう命にはヒトのものだけでなく、すべての種のものが含まれる。ヒトの命は当たり前に大切なものである。対してヒト以外の命は、ヒトの 命ほどの重みはないと考えられがちである。本発表ではまず、ヒトとそれ以外の種の命の重みに差があるかどうかを考えてみたい。そして、その考察の上、これからのヒトがもつべく思考態度について議論したい。<br>
 
生物多様性の保全が正しい行いだと考える立場は、命の重さを尊重する。ここでいう命にはヒトのものだけでなく、すべての種のものが含まれる。ヒトの命は当たり前に大切なものである。対してヒト以外の命は、ヒトの 命ほどの重みはないと考えられがちである。本発表ではまず、ヒトとそれ以外の種の命の重みに差があるかどうかを考えてみたい。そして、その考察の上、これからのヒトがもつべく思考態度について議論したい。<br>
  

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