ヤマトウミヒルモ
提供: 広島大学デジタル博物館
(Halophila nipponicaから転送)
ナビゲーションに移動検索に移動広島大学 > 広島大学デジタルミュージアム > デジタル自然史博物館 > 植物メインページ > 郷土の植物 > 維管束植物 > ヤマトウミヒルモ | 広島県の植物図鑑 / 和名順
ヤマトウミヒルモ Halophila nipponica J.Kuo
シノニム
- Halophila japonica Uchimura & Faye
その他
- Halophila nipponica J.Kuo(世羅ほか2010)
- Halophila nipponica John Kuo
分類
維管束植物門 Tracheophyta > 種子植物亜門 Spermatophytina > 被子植物上綱 Angiospermae > モクレン綱 Magnoliopsida > ユリ上目 Lilianae [= Monocotyledones 単子葉植物] > オモダカ目 Alismatales > トチカガミ科 Hydrocharitaceae > ウミヒルモ属 Halophila
旧分類
種子植物門 Spermatophyta > 被子植物亜門 Angiospermae > 単子葉植物綱 Monocotyledoneae > トチカガミ科 Hydrocharitaceae > ウミヒルモ属 Halophila
解説
- 海草の一種.
- 砂地の海底に生育する常緑で沈水性の多年生草本.水深数m以内の海底に生育.葉が海中に直立し,茎は砂地に潜り横にはう.茎は細長く白い横走茎になり,軟らかい.茎には節があり,節間は20-35 mm.節から1本のひげ根を出し,透明な鱗片葉を2枚つける.さらに鱗片葉の腋の非常に短い枝を出し,そこから葉を2枚出す.葉は有柄で全縁,黄緑色から緑色.葉柄は細長く白色.葉身の質は薄く,細胞層は1–数層,楕円形で長さ18–25 mm,幅10 mm程度.葉脈は網状にならず,中肋と両縁に脈があり,8–12対の側脈でつながる.側脈はほとんど二叉分枝しない.葉の縁の緑帯は1 mm程度.葉縁の透明細胞は4列程度で細長く,長さ200–350 μm.葉身には気孔はなく,葉身細胞はジグソーパズル状で35–60 μm.雌雄異株.
- これまで広島県では未記録であった(広島大学理学部附属宮島自然植物実験所・比婆科学教育振興会 1997)が,2009年に廿日市市宮島近海で生育が確認された(坪田ほか 2009).ウミヒルモH. ovalisに類似するが,ヤマトウミヒルモは葉の縦横比や葉形,葉柄が紫紅色を帯びないこと,葉縁の透明細胞が4層程度,側脈の数が少ないことなどでウミヒルモと区別できる.また,ヤマトウミヒルモは鹿児島県以北に分布するのに対して,ウミヒルモはそれ以南に分布する(Kuo et al. 2006; Uchimura et al. 2006).遺伝的にも,核ITS領域の塩基配列がウミヒルモとは異なる一方,種内変異はほとんど見られない(宮島の配列データはAB523410).
- 海中に生育する小型の多年生草本.Kuo et al.(2006)によって新種記載された.ヤマトウミヒルモは葉の縦横比や葉形,葉柄が紫紅色を帯びないこと,葉縁の透明細胞が目立ち4層程度,側脈の数が少ないことなどでウミヒルモH. ovalis (R.Br.) Hook.f.と区別できる.また,分布域がことなり,ヤマトウミヒルモは鹿児島県以北に分布するのに対して,ウミヒルモはそれ以南に分布する(Kuo et al. 2006;Uchimura et al. 2006;大場・宮田 2007).分布域から考えて,広島県内からこれまでにウミヒルモとして報告のあるものは本種の可能性が高く,今後標本調査や現地調査が必要である.本種は「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)(米倉・梶田 2003–)では扱われていない.
- Kuo et al.(2006)によって新種記載された.ヤマトウミヒルモは葉の縦横比や葉形,葉柄が紫紅色を帯びないこと,葉縁の透明細胞が4層程度,側脈の数が少ないことなどでウミヒルモと区別できる.また,ヤマトウミヒルモは鹿児島県以北に分布するのに対して,ウミヒルモはそれ以南に分布するとされる(Kuo et al. 2006, Uchimura et al. 2006).広島県内から報告のあるウミヒルモは本種の可能性がある.
花期
- 花は広島県では未確認とされていたが,宮島近海の集団で開花が確認されている.
- 雌雄異株で開花は7–8月とされるが,宮島近海の集団では花および果実は未確認.
分布・産地・天然記念物
分布
産地
- 廿日市市宮島町大砂利沖
- 2021年2月20日,広島ホームテレビ,地球派宣言特別番組『広島の水の中もぐってみました』(13:00〜)でも放映された.
- 竹原(柚村ほか 2022a)
天然記念物
標本
- 竹原市(MAK-296963: H. ovalisウミヒルモとして),宮島(HIRO-MY-26001)
慣用名・英名・広島県方言
慣用名
英名
広島県方言
備考
- 環境庁コード:
- 海草
- 属名のHalophilaは,ギリシャ語のhalo-(salt,塩)と-philus(loving,好む・好き)に由来.
- 環境省NT(ウミヒルモHalophila ovalisとして)
DNA data/barcording
nr ITS region
- Japan. Honshu, Hiroshima-ken, Hatsukaichi-shi, Miyajima Isl. (HIRO:HIRO-MY 26001) http://getentry.ddbj.nig.ac.jp/search/get_entry?mode=view&type=flatfile&database=ddbj&format=&accnumber=AB523410
文献(出典) (文献に関する注意事項)
引用文献
- 広島大学理学部附属宮島自然植物実験所・比婆科学教育振興会(編). 1997. 広島県植物誌. 832 pp. 中国新聞社, 広島.
- Kuo, J. Kanamoto, Z., Iizumi, H. & Mukai, H. 2006. Geagrasses of the genus Halophila Thouars (Hydrocharitaceae) from Japan. Acta Phytotax. Geobot 57: 129–154.
- 坪田博美・久保晴盛・向井誠二. 2009. 広島県宮島近海で見つかったヤマトウミヒルモHalophila nipponica J.Kuoについて. Hikobia 15: 339-347. [Tsubota, H., Kubo, H. & Mukai, S. 2009. A new finding of seagrass Halophila nipponica J.Kuo (Hydrocharitaceae) from Miyajima Island in Hiroshima Prefecture, SW Japan. Hikobia 15: 339-347.] pdf
- Uchimura, M., Faye, E. J., Shimada, S., Ogura, G., Inoue, T. & Nakamura, Y. 2006b. A taxonomic study of the seagrass genus Halophila (Hydrocharitaceae) from Japan: description of a new species Halophila japonica sp. nov. and characterization of H. ovalis using morphological and molecular data. Bull. Natn. Sci. Mus. Tokyo, Ser. B 32: 129–150.
- Radcliffe-Smith, A. 1998. Three-language list of botanical name components. - i + 143 pp. Royal Botanic Gardens, Kew.
- 柚村七々美・坪田博美・加藤亜記・大塚 攻. 2022a. 海草(ヤマトウミヒルモ). In 近藤裕介・大塚 攻・佐藤正典(編), ハチの干潟の生きものたち―広島県竹原市に残る瀬戸内海の原風景, pp. 124. ネクパブ・オーサーズプレス.
広島大学 > 広島大学デジタルミュージアム > デジタル自然史博物館 > 植物メインページ > 郷土の植物 > 維管束植物 > ヤマトウミヒルモ | 広島県の植物図鑑 / 和名順