西条盆地の湿地保全活動
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西条盆地の湿地保全活動
- 東広島市は広島県でも有数の希少な生物が多く生育している場所であり, 生物多様性が高い重要な場所です. 環境省の生物多様性の観点から重要度の高い湿地(重要湿地)として No.394 東広島市の湧水湿地およびため池群という名目で指定されています. しかしながら, その環境が人為的な要因や外来種により脅かされています. 希少な生物を守るため, 環境を維持するために活動をしています.
侵略的外来生物の影響
- 侵略的外来生物の影響は以下のようなものがあります.
- 在来生物の捕食, 病原体の媒介をし, 在来生物を絶滅の危機まで追い込みます.
- 隠れ家となる水草などを減少させ, 間接的に生育場を破壊します.
- 在来生物と共通の餌資源や生育場を競合をする.
- 近縁の在来生物との交雑が起こり, 遺伝子汚濁が起こります.
- ヌートリアやアメリカザリガニのように穴を掘り, 地盤のゆるみや水漏れなどを起こします.
- 農地の荒らしや作物の荒らしなど農業被害が起こります.
開発による影響
- 開発による影響は以下のようなものがあります.
- 希少生物の生育場の破壊, 産卵場の破壊.
- 開発の際に出た土砂をほかの場所へ運ぶことにより, 本来生育するはずのない場所に生物が分布を拡大させる可能性があります.
- 自動車道など環境を分断・島状化することにより, 局所個体群が形成され遺伝的多様性の低下やエッジ効果の影響を受ける可能性があります.
外来種駆除活動
環境の変化

西条盆地は自然の湖沼がなく,ため池や田んぼがヘイケボタルやアカハライモリのような水生生物の生息場として機能している. 大学の中心にあるぶどう池. 以前はベニオグラコウホネ, ヒメタヌキモに代表される希少な生物が多く生息しており, 周辺のため池と比べ生物多様性が高い場所であった. しかし, 2018年の西日本豪雨から突然として環境変化が起き現在はハゴロモモやアメリカザリガニのような外来生物が蔓延っている. ヒメタヌキモは全国的に花を咲かせにくい種であることがしられているが, かつてのぶどう池では多数花茎をあげている様子が観察された. 近年では, 外来のオオバナイトタヌキモに淘汰され, そのような様子は見られない. 下図でもわかるとおり, 池の環境が変わるとともに, 大規模な松枯れも発生している. 現在では, そのような環境は管理不足や開発などにより失われつつある. 我々は, 次世代にこの環境を残すために西条盆地の野生動植物を保全してる.
繁茂する外来生物
アメリカザリガニの駆除活動
活動の様子
- 駆除活動の様子
てこの原理を用いて側溝を持ち上げる逸見氏(側溝を外した前後はアメリカザリガニの駆除活動のページへ)(広島県東広島市鏡山 生態実験園; 撮影: 有村拓真, Dec. 12, 2023)
希少生物の保全活動
イシモチソウの保全
イシモチソウとは
- イシモチソウは, モウセンゴケ科に分類される食虫植物で, 日本で唯一の球根性のドロセラである. 広島県では西条盆地を中心として生育しており, 広島県RDBカテゴリ(2021)で絶滅危惧II類(VU)に指定されている.
イシモチソウの保全活動
キャンパスにおけるイシモチソウの歴史
大学移転前, 南グラウンド一帯が大きな湿地帯であり, 西日本でも最大級のイシモチソウ自生地であったといわれている. キャンパスでは広島大学環境報告書2006で掲載された他, 他大学から研究を目的に足を運んだ方もいた. 大学移転後南グラウンド近辺の隅にイシモチソウの大群落が確認されたが, 平成14年にその場所が開発の対象となり, 盛り土が直前までされていた. しかし, 当時の学生が学長である牟田氏に直談判を行い開発の中止, 盛り土の撤去が行われた. その時に保護地区に指定され, ロープを張るなど立ち入り制限を行っている. そこから東広島植物園を中心に毎年草刈りをし保全活動が行われている. 令和5年, 自生地の目の前で新たに開発が推進され, 環境が変化しつつある. 建物などにより日照条件や地下水位が変化すると完全に消滅してしまうことが考えられる.
- 遷移に弱く, 遷移が進むとだんだんと個体数が減少する.
- 自生地の目前まで新たな研究所が建設されている.
参考文献
- 日本生態系協会. 2022. ビオトープ管理士 公式テキスト. 309 pp. 日本能率協会マネジメントセンター, 東京.
- 大滝 末男. 1980. 日本水生植物図鑑. 318 pp. 北隆館, 東京.
- 角野 康郎. 2014. ネイチャーガイド 日本の水草. 323 pp. 文一総合出版, 東京.
- 下田 路子. 1987. 西条盆地(広島県)の溜池の水草. 水草研会報 29: 5-7.
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