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*坪田博美.  2020b.  新刊紹介: "大場達之・宮田昌彦.  日本海草図譜, 改訂版."  Hikobia 18(2): xx-xx.
 
*坪田博美.  2020b.  新刊紹介: "大場達之・宮田昌彦.  日本海草図譜, 改訂版."  Hikobia 18(2): xx-xx.
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大場達之・宮田昌彦.  日本海草図譜, 改訂版.  xii + 139頁.  (2020).  北海道大学出版会, 札幌.  定価 \10,000+税(ハードカバー).  ISBN978-4-8329-1409-4.
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初校での訂正なしの版
      
大場達之・宮田昌彦.  日本海草図譜, 改訂版.  xii + 139頁.  (2020).  北海道大学出版会, 札幌.  定価 \10,000+税(ハードカバー).  ISBN978-4-8329-1409-4.
 
大場達之・宮田昌彦.  日本海草図譜, 改訂版.  xii + 139頁.  (2020).  北海道大学出版会, 札幌.  定価 \10,000+税(ハードカバー).  ISBN978-4-8329-1409-4.
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 本書は「日本海草図譜」(大場・宮田 2007)を改訂したものである.永らく重版未定とあったが,このたび改訂版として出版された.改訂版では新しい分類体系に準拠するとともに,旧版出版以降の分類学的知見が反映されて内容が充実している.外見では,旧版は判型が特殊でA3サイズの大型本であったが,改訂版はA4サイズになり扱いやすくなっている.内容は「『改訂版』の刊行にあたっての序文」,「はじめに」,「凡例」,「目次」,「第1章 日本産海草概説」,「第2章 科・属・種の検索と記載」,「第3章 栄養体による種の検索」,「第4章 日本海草図譜」,「第5章 海草の群落体系」,「第6章 海草と人とのかかわり」,「第7章 Seagrasses of Japan」,「文献」,「和名索引」,「学名索引」となっている.凡例では各科の形態が代表種の写真で一覧できる.第2章の記載では一般的な図鑑のように各科や属,種についての記載がなされているだけでなく,分類学的な動向や問題点についても解説されている.記載・検索表に続く第4章の図譜では旧版同様に分布図に加えてカラー写真で各種の生態や形態が紹介されている.一般的な図鑑では示されていない葉や茎,根の切片の写真も示されている.ひとつ残念なことに,ヤマトウミヒルモの分布図(40頁)に坪田ほか(2009,Hikobia 15: 339-347)で報告のあった宮島が含まれていない.続く第5章では,植物社会学的な研究にもとづいた海草の群落体系が示されており,この章の内容は他の類書ではあまり例がない.ここでは現段階での知見にもとづいた海草群落の分類体系が提案されている.第6章では,海草と人との関係性として食糧や宗教,生態系や保全,生物多様性や絶滅危惧種などの内容が記されている.第7章では英語での記載や検索表が提示されている.いくつかの章にまたがって全10のコラムがあり,海草の系統関係や2007年以降の海草の研究の進展,アマモの基準標本,海草の受粉など記載には含まれないが海草を理解する上で重要な内容が記されている.また,近年多く利用されるようになったデジタル技術によるネイチャープリンティングにもふれられている.本書は日本近海の海草を網羅した書籍であり,日本の海草やそれに関する現在の知見を研究・理解する上で必須の書といえる.判型が小さくなったことで旧版よりも価格も以前よりも入手しやすくなっており,海草を知りたい方だけでなく旧版をお持ちの方にもお薦めの書である.
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 本書は「日本海草図譜」(大場・宮田 2007)を改訂したものである.永らく重版未定とあったが,このたび改訂版として出版された.改訂版では新しい分類体系に準拠するとともに,旧版出版以降の分類学的知見が反映されて内容が充実している.外見では,旧版は判型が特殊でA3サイズの大型本であったが,改訂版はA4サイズになり扱いやすくなっている.内容は「『改訂版』の刊行にあたっての序文」,「はじめに」,「凡例」,「目次」,「第1章 日本産海草概説」,「第2章 科・属・種の検索と記載」,「第3章 栄養体による種の検索」,「第4章 日本海草図譜」,「第5章 海草の群落体系」,「第6章 海草と人とのかかわり」,「第7章 Seagrasses of Japan」,「文献」,「和名索引」,「学名索引」となっている.凡例では各科の形態が代表種の写真で一覧できる.第2章の記載では一般的な図鑑のように各科や属,種についての記載がなされているだけでなく,分類学的な動向や問題点についても解説されている.記載・検索表に続く第4章の図譜では旧版同様に分布図に加えてカラー写真で各種の生態や形態が紹介されている.一般的な図鑑では示されていない葉や茎,根の切片の写真も示されている.ひとつ残念なことに,ヤマトウミヒルモの分布図(40頁)に坪田ほか(2009,Hikobia 15: 339-347)で報告のあった宮島が含まれていない.続く第5章では,植物社会学的な研究にもとづいた海草の群落体系が示されており,この章の内容は他の類書ではあまり例がない.ここでは現段階での知見にもとづいた海草群落の分類体系が提案されている.第6章では,海草と人との関係性として食糧や宗教,生態系や保全,生物多様性や絶滅危惧種などの内容が記されている.第7章では英語での記載や検索表が提示されている.いくつかの章にまたがって全10のコラムがあり,海草の系統関係や2007年以降の海草の研究の進展,アマモの基準標本,海草の受粉など記載には含まれないが海草を理解する上で重要な内容が記されている.また,近年多く利用されるようになったデジタル技術によるネイチャープリンティングにもふれられている.本書は日本近海の海草を網羅した書籍であり,日本の海草の研究やそれに関する現在の知見を理解する上で必須の書といえる.判型が小さくなったことで旧版よりも価格面でも入手しやすくなっており,海草を知りたい方だけでなく旧版をお持ちの方にもお薦めの書である.
 
(坪田博美)
 
(坪田博美)

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