植物観察会/KansatsukaiPageMiniLetter501

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ヒコビアミニレターNo. 501(2019年10月28日)

 第625回ヒコビア植物観察会は,2019年9月26日に広島県安芸高田市香六ダムで行われ,42名の参加者があった.1996年10月20日に,この香六ダムでヒコビア観察会が行われ,その時に,湖水の減水した泥地に興味深い植物が多く見つかったので,それを期待して行ったが,水位が高く湖岸の大部分は水没していて残念であった.それでも,みんなで手分けして,水中に沈んでいる植物を採集して,湖岸に並べた.サワトウガラシ(かろうじて花が残っていた)・ミズユキノシタアゼムシロアオガヤツリトキンソウオオイヌタデオオクサキビミズビエキカシグサなどが見つかった.関が,昨年,見つけたクロタマガヤツリ[広島県の絶滅のおそれのある野生生物(第3版)2011では絶滅になっている]は確認できなかった.湖の周辺は内陸型のアカマツ林で,沿岸部にあるアラカシクロキシャシャンボマンリョウなどは見られず,コシアブラタカノツメオオウラジロノキナツツバキリョウブなどがある.豊原先生が注目していたアラゲナツハゼは見つからなかった.道路沿いの高田流紋岩の岩壁にショウジョウスゲが群生している.湖に流入する河川を上流に進む.ヌルデに五倍子(ヌルデノミミフシ,アリマキによる虫こぶ)があった.渓流中の岩上でクマノゴケ(環境省準絶滅危惧,広島県絶滅危惧II類)を坪田先生が見つけた.1996年にあったイヌブナは見つからなかった.ナメラダイモンジソウがつぼみをつけていた.渓流の湿った岩上にオオミズゴケ(環境省・広島県準絶滅危惧)が群生している.草原で昼食をとる.ここに大きなクロマツ[多分,植栽]があり,天狗巣がついている.ベトナムからの留学生ファン・クイン・チさんが器用にクロマツに登り,天狗巣の写真を撮影した.天狗巣とは,樹木の枝が異常に密生したものの総称で,その原因は子嚢菌類・担子菌類・昆虫・線虫・ウイルスなどがある.”マツの天狗巣病“というのは,調べたが見当たらない.「サクラの天狗巣病」は子嚢菌類外生子嚢菌科のTaphrina wiesneri,「タケの天狗巣病」は子嚢菌類麦角菌科のAciculosporium take,「モミの天狗巣病」は担子菌類層生銹菌科のMelampsporella caryophyllacearumで,ナデシコ科植物との間を移動する.湖を一周してダムの堤防に帰った.堤防にはオガルカヤが点在し,レモングラスと同属なので,葉をもむとレモンの香りがかすかにする.みんなで葉をもんで香りを楽しんだ.

(T. Seki 記)

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