植物観察会/KansatsukaiPageMiniLetter499

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ヒコビアミニレターNo.499(2019年7月27日)

 2019年7月21日の第623回植物観察会は,庄原市本村町の葦嶽山(815 m)で行われた.葦嶽山は日本ピラミッド異名がある.また,昔,神武天皇が東征の時に立ち寄られたという伝説があり,神武天皇陵とも言われて,話題となった山である.当日は,梅雨前線が停滞していてあいにくの天候であり,広島市から西の大竹付近には大雨警報が出るほどであったが,備北地方は大丈夫とのことで出発した.広島市から国道54号線で可部を通り,上根峠を登り詰めたころから雨が弱くなり,空も明るくなってきた.集合場所は葦嶽山登山道の灰原コースの海抜約650 m付近の駐車場で,10時に集合.天気は霧雨で傘をさすかどうか迷う程度であった.参加者21人.駐車場の下部にトイレ付きの立派な休憩所があり,霧雨が少し強くなったのでそこで説明をする.1988年11月13日に私が記録したデータを元にして説明した.葦嶽山付近の地質は古期花崗岩類に属し,マサ化が進み,真砂土が浸食されて巨石が残され,巨石群がたくさん見られる.葦嶽山の頂上は真砂土がまだ浸食されないで残っており,その植生はアカマツ自然林と共通の種組成を示すものであり,アカマツ—ハナゴケ群団属するものである.1988年当時の種組成は次のようである.I層7 m 20 % ブナ,II層 ブナミズナラアカマツ,III層 ゲンカイツツジネジキダイセンミツバツツジナツハゼリョウブアセビヤマツツジクリミヤマガマズミスノキ,IV層 ゲンカイツツジソヨゴオヌカザサアクシバコナラアキノキリンソウ,V層 ハナゴケフデゴケカモジゴケハイゴケ.今回2019年の植生は周辺から見通した限りではあまり変化していないように見受けられた.真砂土のため遷移の進行が阻害されているのである.海抜750 mから上部の露岩地にゲンカイツツジの出現することが注目されるが,葦嶽山の北西4 kmにある大黒目山(801 m)でも数年前観察会で自生が確認されているが,そこの地質も同じ種類の黒雲母花崗岩であり,同じくらいの海抜高度に見られる(しかし山頂には見られないので,高度と関係する寒さではなく,別の環境要因がゲンカイツツジの出現に関係するのであろう).今回は灰原コースで駐車場と山頂を往復しただけで他を見る余裕はなかったが,登山道の整備状況は良かったという印象を持った.ただ,気になったのは道端に植栽されたトサミズキベニドウダンが自生と間違う程に上手に育てられていたことであり,前回の観察会でも同様の感想を述べたのを思い出した.決して悪いと言っているのではなく,自生と植栽について気配りが必要なことを言いたいのである.例えば,広島大学の東広島キャンパスの生態実験園に20数年前に広島県には自生しないミズバショウを植栽して,なぜ自生しないのかを知ろうとしたが,湧き水のある適地に植えたものは今でも元気に育っている.しかし,そのうち死滅するだろう.その頃はこちらの方が先に死んでおり,ミズバショウの死に目には会えないだろうが.

(G. Toyohara 記)

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