植物観察会/KansatsukaiPageMiniLetter313

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ヒコビアミニレター No. 313 (2006年1月5日)

2005年12月4日の第438回植物観察会は呉市吉浦の茶臼山(280 m)で行われた.JR吉浦駅前に10時集合.参加者28名.吉浦駅の北西にある神社には,コジイ,ナナメノキ,アラカシ,タイミンタチバナが見られた.タイミンタチバナは宮島の海抜高300 m以下の山地では普通に見られる樹木であるが,広島湾の他の島ではあちこちで見かけるものの量的には少ない.本土側では,呉市において社寺林の中に点在するが,宮島対岸本土では見かけることはない.しかし,タイミンタチバナは広島湾岸では人為的攪乱で滅びたのではないかと考えられるので,残存個体の存在は自然分布域を知る手がかりとして貴重である.宮島では,マツ枯れ木を伐採・搬出した後に,一時的にタイミンタチバナが減少したことがあり,攪乱が死滅の原因であり,微気候の変化(寒冷化)が直接の死因になったようであった.焼山団地に通じる道路をそれて,鳴滝を横に見ながら目的地に向かう.今回の観察会では,ハマセンダンを観察する目的であったが,その木はキハダの大木であり,ハマセンダンの存在は誤りであった.キハダは放棄された耕作地の辺にあったので,以前に植えられたものと思われる.小雨模様の天気であり,寒さに震えながら昼食をとり,茶臼山を経由して下山する.当地の二次林は,アカマツ-アラカシ群集・コシダ亜群集に属するが,内陸部に隣接する西条盆地では同群集のタカノツメ亜群集が存在するので,吉浦と西条の間に両亜群集の境界がある事になる.宮島自然植物実験所に在籍した稲生君の修士論文(2001)は,その境界付近における山火事跡地の植生に関する研究であったが,山火事の攪乱により,同群集のネズ亜群集に退行遷移することや,タカノツメ亜群集からコシダ亜群集に退行遷移することを報告しており,人為的攪乱が植物分布に大きな影響を及ぼしていることを示唆している.逆に,二次林を放置すると反対方向への変化が生じる.吉浦では,二次林が放置されて遷移が進行しつつあり,タカノツメやコシアブラの幼木が侵入しつつあるが,それらの落葉樹やアセビ,ソヨゴ,イヌツゲなど二次林要素の常緑樹は照葉樹林の復活と共に再び消えて行く運命にあり,吉浦の植生はその様な兆候を示していた.

(G. Toyohara 記)

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