東広島キャンパスの生き物/過去のニュース/2021上半期
2021年(上半期)の東広島キャンパスの生き物
キャンパスで見られる生き物の2020年1月~6月の情報です.写真や名前をクリックすると解説ページに移動します(黄色く反転しているリンクは作成中のページです).解説ページの写真はクリックすると拡大します.
- 2021.05.24-06.07 発見の小径ではハルゼミがさかんに鳴いています.本種は幼虫成虫ともにマツ類への依存が強く,基本的にマツ林でしか見られません.また,小径でニホンアナグマを観察することができました.視力がよくないためか撮影者の近くまで寄ってきましたが,シャッター音に驚いて逃げていきました.湿地ではトノサマガエルが鳴いている様子も見られます.
- 小川でキイロサナエが発見されました.砂泥が堆積した緩やかな川に生息します.同属で類似種のヤマサナエとの識別はオスではやや難しいですが,胸のL字斑の形の違いや,尾端付属器の長さの違いなどを総合的に判断して識別します.同じ川ではグンバイトンボの産卵も観察することができました.
- ベニボタルがキャンパスでよく見られる季節になりました.本種は体内に毒をもっているとされ,赤紫色の翅で天敵にアピールしています.そしてこの甲虫にベイツ型擬態(害のある虫に自らの姿を似せる擬態)をしている昆虫がキャンパスでも多く見られます.ベニカミキリは花によく集まるカミキリムシで,幼虫は枯れた竹材を食べます.セグロベニトゲアシガは蛾でありながら甲虫のベニボタルによく似ており,幼虫はササ類につくアブラムシを食べます.すでに出現時期が終わりましたが,アカハネムシもベニボタルに似た色と姿形をしています.
- タマムシ類の紹介です.アオマダラタマムシは,サクラやソヨゴなどの伐採木に集まり,山中池で多く見られます.ヒラタチビタマムシ,クズノチビタマムシは小型のタマムシで,前者はナガバモミジイチゴやビロードイチゴなどのキイチゴ類を食草とし,後者はクズを食草とします.
クズノチビタマムシの成虫.クズの葉に見られる.(広島県東広島市鏡山; 撮影: 南葉錬志郎, May 25, 2021)
5月
- 2012.05.25-28 初夏のキャンパスで見られる大型のコガネグモ科です.チュウガタコガネグモは他のコガネグモ類と腹部の模様が異なり,黄色い帯が途切れて斑紋状になっています.夜にはオニグモとヤマオニグモが網を張ります.両種ともに生息環境や形態が似ていますが,ヤマオニグモは腹部がやや細長く,前方の小白斑が目立ちます.
- 森林性のゴキブリを紹介します.モリチャバネゴキブリは小規模な森林でも個体数が多く,成虫は胸部に一対の黒斑があり,幼虫は体に黄色い縁取りがあるのが特徴です.主に初夏のふれあいビオトープで植物の葉の上で観察されるのはヒメクロゴキブリであることが多いです.翅脈が白い個体と全体的に黒い個体がいます.夜間樹液などに集まっている大型のゴキブリはヤマトゴキブリです.オスは翅が長く一般的なゴキブリのイメージに近い姿をしていますが,メスは翅が腹部の半分ほどの長さしかありません.
- 2021.05.22 今年は例年より早い梅雨入りとなりました.多くの昆虫で出現時期が早まっており,カブトムシがアラカシの樹液に飛来していました.ヒラタクワガタやコクワガタは初夏からでも観察できます.オオスズメバチやシロスジトモエ,ヨツボシケシキスイの姿もありました.
- 雨が続いているのでキノコや陸生貝類が観察しやすくなっています.セトウチマイマイとコベソマイマイはキャンパスで広く見られますが,大型種のマイマイ属の一種は生息地が非常に限られています.ヤマナメクジはかなりの大型種で,キノコを食べている姿を観察できます.コツチグリやスジオチバタケは林縁部で観察できました.
- スズメガ科の蛾です.ウンモンスズメはアキニレやケヤキを食草とし,緑色の斑紋と桃色の後翅が美しい昆虫です.コウチスズメはスノキを食草とし,後翅の眼状紋が特徴です.ホソバスズメはヌルデを食草とし,黄褐色で細長い体をしています.
- クモには甲殻類の名を冠した種やグループが存在します.その一部を紹介します.ワカバグモはカニグモ科のクモで,体が扁平で第1歩脚と第2歩脚が長いその姿はたしかに蟹を彷彿とさせるものがあります.キンイロエビグモはエビグモ科に属し,カニグモに比べやや縦長な印象です.ヤドカリグモはエビグモ科ヤドカリグモ属に属しますが,外見にヤドカリの要素はほとんどありません.これらに加え,キャンパスではエビグモ科シャコグモ属に分類されるシャコグモも生息します.
- 2021.5.14 キャンパス内でハルゼミが鳴いています.ふれあいビオトープではトノサマガエルの卵の発生が進んでいました.もう少しすると見慣れたオタマジャクシの形となって孵化します.東広島キャンパスのふれあいビオトープではトノサマガエルの他にニホンアカガエルやシュレーゲルアオガエルが繁殖しています.
4月
キャンパスで見られた夏鳥や,春を告げる鳥たちです.キビタキやクロツグミは代表的な夏鳥で,前者はキャンパスでもしばしば鳴き声を聞きます.そのほかセンダイムシクイやエゾムシクイなどのムシクイ類やヤブサメの鳴き声を聞くことができました. キジやヒバリ,セグロセキレイは農耕地で見られます.
クロツグミ(オス).ツグミと行動を共にしていた.(広島県東広島市鏡山; 撮影: 南葉錬志郎, Apr. 23, 2021)
- 4月に観察されたトンボです.トラフトンボは今年キャンパスでの発生数が多く,山中池などでも観察できました.シオヤトンボは例年通りふれあいビオトープや生態実験園で見られました.タベサナエとフタスジサナエは前者がアカデミック地区に多く,後者が山中池などのアカデミック地区から少し外れたため池で観察できます.ホソミオツネントンボは越冬明けの青い個体が多く見られ,アサヒナカワトンボは山中谷川で今年も発生しています.
- 春を告げるクモを紹介します.アオオニグモは春の代表的なオニグモ類で,民家の庭などでも観察できる身近な種類です.ビジョオニグモという類似種も存在しますが,本種は春から初夏にかけて成体が出現するのに対し,ビジョオニグモは秋から初冬にかけて成体が見られます.サガオニグモはやや暗い森林に見られる縦長のオニグモで,コガネグモ類に類似した「隠れ帯」という装飾を巣の中央につけます.ネコハエトリも身近なハエトリグモの一種で,オスの成体は春だけ観察することができます.
サガオニグモの成体(メス).ナガコガネグモのように縦に隠れ帯をつける.(広島県東広島市鏡山; 撮影: 南葉錬志郎, Apr. 23, 2021)
- マルハナバチやクマバチは,春にフジやツツジの周りで簡単に観察することができます.羽音が大きく怖いという印象を持たれがちですが,むやみに触らなければ基本的に人に危害を加えることはありません.
イロハモミジに訪花するコマルハナバチの成虫(メス).(広島県東広島市鏡山; 撮影: 南葉錬志郎, Apr. 23, 2021)
- マルハナバチと同様にハナムグリ類も花に集まっている様子が観察できます.身近な種としてコアオハナムグリ,アオハナムグリ,ナミハナムグリが生息し,いずれもよく似ていますが色彩や大きさ,毛深さなどから識別可能です.
サワフタギに訪花するコアオハナムグリの成虫.(広島県東広島市鏡山; 撮影: 南葉錬志郎, Apr. 25, 2021)
ミヤマガマズミに訪花するアオハナムグリの成虫.(広島県東広島市鏡山; 撮影: 南葉錬志郎, Apr. 25, 2021)
ハルジオンに訪花するナミハナムグリの成虫(メス).(広島県東広島市鏡山; 撮影: 南葉錬志郎, Apr. 27, 2021)
- シャクガ科の幼虫といえばいわゆる細長い「シャクトリムシ」がイメージされますが,中には大変奇妙な姿をしているものもいます.クロモンキリバエダシャクの幼虫は背面に二股に分かれた突起を持ちます.オカモトトゲエダシャクの幼虫はコブが多く,鳥の糞のような色の体をしています.クロスジアオシャクはブナ科の若芽に似た突起の多い体をしています.
- 青い翅が美しいチョウ目の昆虫です.アオスジアゲハは日中活発に飛翔し,様々な花の蜜を吸っていきます.オオミズアオとオナガミズアオはやや識別の難しい大型蛾です.詳しい解説はそれぞれの個別ページをご覧ください.
3月
- 2021.03.15-31 日光浴をするカメの姿が見られました.東広島キャンパスでは現在3種類のカメが確認されています.ニホンイシガメは日本在来のカメで,クサガメとミシシッピアカミミガメは外来のカメです.ニホンイシガメは全国的に減少傾向にあるため,比較的多くの個体が見られる東広島キャンパスは貴重な生息地となっています.一方で,クサガメはニホンイシガメと交雑し,ウンキュウと呼ばれる繁殖能力のある雑種をつくり,純系のニホンイシガメの血統を壊してしまう可能性があります.またミシシッピアカミミガメはニホンイシガメと生息場所や食物で競合するほか,水草などへの食害が懸念されています.現状では外来のカメの繁殖等は確認できていませんが,今後の動向に注意が必要です.
- 2021.03.01-14 日中は気温が上がるようになってきました.春の陽射しを浴びて昆虫たちが活動を始めています.
ニホンカナヘビの姿を見ることができました.東広島キャンパスでの個体数は多く,素早く逃げていく様子をよく目にします. ニホントカゲと比べてほっそりとした光沢のない体つきと,長い尾が特徴です.
2月
- 2021.02.13-28 上旬~中旬に産まれたニホンアカガエルの卵塊が孵化しています.現在湿地にはたくさんのオタマジャクシが泳いでいます.
- 早春の蛾が出現しています.オカモトトゲエダシャクは静止時に翅を折り畳むのが特徴ですが,類似種のクワトゲエダシャクも同時期に出現するので同定には注意が必要です.トビモンオオエダシャクは大型のシャクガで,2月-3月にかけて比較的多くの個体を観察することができます.シロトゲエダシャクはメスの翅が退化しているフユシャクガの一種です.
- 今年の東広島キャンパスにおける飛来数の多かった冬鳥は,トラツグミ,マヒワでした.トラツグミはやや薄暗い林縁の落ち葉溜まりや草地に降り立ち,ミミズやアオドウガネなどのコガネムシ類の幼虫を捕食する様子が観察されます.マヒワは「クチュクチュ・チュイーン」などと鳴きながら群れで飛翔し,ヤシャブシの実を食べることが多いです.ベニマシコはヨモギなどが茂る草地で「フィッ・フィッ・ホッ」と鳴いています.
- 植物が密に茂っている藪の中にはミソサザイが潜んでいることがあり,ウグイスに似た声で「チャッ・チャッ」と鳴きながら素早く動き回ります.ハイタカはオスがメスより一回り小型で,樹間を敏捷に飛翔し,小鳥などを狩ります.ルリビタキはジョウビタキに比べるとやや薄暗い林縁部などに多く,成熟したオスは美しい瑠璃色をしています.
ヒヨドリを仕留めたハイタカ(オス).(広島県東広島市鏡山; 撮影: 南葉錬志郎, Feb. 19, 2021)
- 留鳥や比較的観察しやすい冬鳥の一覧です.アオジは薄暗い林縁や薮を好み,やや鋭い声で「チッ・チッ」と鳴きます.ジョウビタキは開けた場所の枝や杭にとまり,尾を振りながら「ヒッ・ヒッ」と鳴きます.ヒヨドリは畑や草地で野菜や野草を食べ,スズメは群れで集まって棒にとまる様子が見られました.ハクセキレイは雪が薄く積もった道を歩いていました.
- 2021.02.01-12 上旬の湿地ではニホンアカガエルやアキサンショウウオの繫殖活動が見られました.また,早くもシュレーゲルアオガエルのオスが訪れている場所もありました.東広島市ではふつう3月以降繁殖のピークを迎えます.広島県のシュレーゲルアオガエルのページもご覧ください.
- ががら山でサンショウクイの亜種であるリュウキュウサンショウクイを観察することができました.近年分布を北に拡大しており,東広島市では冬鳥のようです.時折「リーーー!!」という鳴き声を発しながら飛翔します.トビとノスリは生息環境が似ており見間違えやすい猛禽類ですが,前者は一回り大型で尾羽の先が直線的,かつ翼に一対の白斑があります.一方,後者は腹に茶色い帯があり,翼に一対の茶色い斑があります.
- 常緑広葉樹の葉裏や広葉樹の小枝,冬芽には昆虫が越冬していたり,擬態していたりします.
1月
- 2021.01.05-24 東広島市はニホンアカガエルやアキサンショウウオが繁殖する時期になりました.ニホンアカガエルは鳴嚢をもたないため,「クククク…キョキョキョ…」と目立たない声で鳴きます.広島県のニホンアカガエルのページもご覧ください.
アキサンショウウオは広島県と愛媛県にのみ分布する止水性のサンショウウオです.従来カスミサンショウウオとされていた種ですが,近年9種に再分類された内の一種です.(Matsui et al. 2019)
- 東広島キャンパスでトラツグミを観察することができました.黒い鱗のような模様に覆われている大型のツグミですが,林床などではほとんど目立ちません.頭を動かさず体だけを揺する特徴的な動作を見せることもあります.シロハラが越冬中のシュレーゲルアオガエルを捕らえる様子や,ハシブトガラスがネズにとまる様子を観察することができました.
越冬中のシュレーゲルアオガエルを捕らえたシロハラ.(広島県東広島市鏡山; 撮影: 南葉錬志郎, Jan. 12, 2021)
- ヤシャブシやハンノキの木が多く生えている場所ではマヒワの群れを観察することができました。オスは頭頂が黒く,体の黄色みが強いのが特徴です.「クチュクチュクチュ・チュイーン」と鳴きます.セイタカアワダチソウやヨモギの生える開けた草地ではベニマシコを観察することができました.オスの成鳥は薄紅色をしています.「ピポ・ピポ」と鳴きます.エナガはカラ類やメジロとしばしば混群を形成しており,学内でもよく見かけます.
セイタカアワダチソウの種子を食べるベニマシコ(オス).(広島県東広島市鏡山; 撮影: 南葉錬志郎, Jan. 21, 2021)
- キャンパスで1月に見られた主な猛禽類です.ミサゴは学内のため池の上空を飛んでいることが多いです.
- 2021.01.01 あけましておめでとうございます.
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- 2022年の東広島キャンパスの生き物
- 2021年の東広島キャンパスの生き物(下半期)
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- 2020年の東広島キャンパスの生き物(下半期)
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