姫島産黒曜石

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姫島産黒曜石(ひめしまさんこくようせき)

  • 大分県姫島では特徴的な黒曜石が出土する。通常、黒曜石はその名が示すとおり、黒く光る石であるが、姫島で出土する黒曜石は乳白色である。
  • 通常の黒曜石産地においても乳白色、あるいは白味のある黒曜石が少量出土することがあるが、姫島産の黒曜石は全て乳白色を呈し、黒い黒曜石は全く産しない。また、微細な斑点を無数に含むものが多く、肉眼的にも判別しやすい特徴を有している。
  • 姫島は国東半島の北東に近接する瀬戸内海に浮かぶ島であり、観音崎、オイ崎、稲積、両瀬の大きく4ヶ所の産地が知られている。
  • 姫島産黒曜石は後期旧石時時代から利用されているが、縄文時代における利用が中心である。
  • 旧石器時代では瀬戸内海が陸化し、現在の姫島産黒曜石原産地は山の頂上であった。山裾など低地部ではガラス質安山岩が広く分布し、それらに混じって少量の黒曜石が存在していたと想定される。
  • 姫島に隣接する大分県中部や山口県宇部台地の旧石器時代遺跡では姫島産黒曜石と考えられる石器が少量出土しているが、まとまった量の姫島産黒曜石製石器は現状で知られていない。
  • 縄文時代になると、現在の瀬戸内海地域に海水が流入し、姫島は島として孤立すると同時に、黒曜石原産地が日常的に海水に洗われることとなり、石材採取が容易となる状況となったものと思われる。姫島が現在のような島となったのがいつ頃かさらに検討が必要であるが、縄文時代早期頃(約8000年前)ではなかったかと推定される。
  • 中国地方西部では旧石器時代末~縄文時代初頭には姫島産黒曜石の利用が認められるが、一般的な利用は早期中葉以降であり、とくに前期以降に出土例、出土量とも大きく増加している。