オオサンショウウオの部屋/オオサンショウウオって?
オオサンショウウオって?
このページでは,国の特別天然物オオサンショウオがどんな生き物なのか簡単にご紹介していきます.
国の特別天然記念物です
オオサンショウウオは両生類として唯一国の特別天然記念物に指定されています.特別天然記念物は彫刻や建造物で言うところの「国宝」に相当するもので,天然記念物の中でも「世界的にまたは国家的に特に価値が特に高いもの」が特別天然記念物に指定されています.文化財であるので許可なく捕まえたりすることはできません.文化財保護法上は法隆寺を修理するのと同じ扱いになります。
生きた化石
オオサンショウウオとほぼ同じ姿をした化石(Andrias scheuchzeri,「アンドリアス・ショイヒチェリ」)が約3000万年前の地層から見つかっています.3000万年前というと人間の祖先がオナガザルと分化した時期に当たります.生物として大先輩に当たりますね.
世界でここだけ
オオサンショウウオの仲間は世界に3種生息しています.他の2種は北米(アメリカオオサンショウウオ)と中国(チュウゴクオオサンショウウオ)に生息しています.オオサンショウウオの分布は中国地方の山間部に限られており,東日本には生息していません.毎年海外から多くの研究者がオオサンショウウオを見るために東広島を訪れています.
オオサンショウウオの仲間
- 日本のオオサンショウウオは,学名を「Andrias japonicus」といい,「オオサンショウウオ科 Cryptobranchidae」に属します.
- アメリカオオサンショウウオ(ヘルベンダー,英名「Hellbender」,学名は「Cryptobranchus alleganiensis」)は,2亜種に分かれます.
- Cryptobranchus alleganiensis alleganiensis 基亜種 イースタンヘルベンダー(ヒガシアメリカオオサンショウウオ)
- Cryptobranchus alleganiensis bishopi 亜種 オザークヘルベンダー
- チュウゴクオオサンショウウオ Andrias davidianusは,最近の研究で数種類に分かれるようです.ミトコンドリアDNAの解析では7つの系統が確認されています.そのうちの3つが新種記載されました.
- Andrias sligoi ミナミチュウゴクオオサンショウウオ.野生下では絶滅状態.英名は,「South China giant salamander」.日本での通称は,「スライゴイ」.
- Andrias jiangxiensis 江西省(こうせいしょう)から記載された種.正式な和名はまだありません.英名は,「Jiangxi giant salamander」.通称では「ジャンシーエンシス」と呼ばれています.
- Andrias cheni 安徽省(あんきしょう)から記載された種です.正式な和名はまだありません.種小名は,安徽師範大学の爬虫両生類学者であるピフイ・チェン氏にちなんで付けられました.英名は,基準産地の黄山市祁門県(きもんけん)にちなんで,「Qimen giant salamander」とされています.
その素顔
カエル等と同じ両生類の仲間ですが,その大きさはずば抜けて大きく全長150 cmにも達します.一生を川の中で過ごし,じっと待ち伏せして吸い込むようにえさを食べます.その生活は非常にゆったりとしており,呼吸も1時間に数度ほど.1週間に魚1匹食べれば生きていけるといわれている省エネな生き物です.
オオサンショウウオの一年
毎年9月に繁殖を行い,オスはその後巣穴で卵を守ります.10月ごろには卵がかえり,幼生はおなかについた卵黄の栄養で大きくなります.2月頃には手足も生えそろい,巣穴から旅立っていきます.
オオサンショウウオの一生
その成長は非常にゆっくりとしていて,成熟し繁殖するまで十数年かかるといわれています.飼育下では50年以上生きる事も確認されていて人と同じくらい生きるのではとも言われています.
なぞの多いその生態
何歳まで生きるのか,巣穴から旅立った幼生はどこに行っているのか等他の生き物ではわかっている事でも明らかになっていない謎がオオサンショウウオには数多く存在しています.寿命50年を超える長命な生き物なので,息の長い研究が求められます.
抱える問題
中国から持ち持ち込まれたチュウゴクオオサンショウウオが日本の河川で日本のオオサンショウウオと交配し大きな問題となっています.交配したものはハイブリッド(交雑種)と呼ばれ,その数は年々増え続け京都の鴨川では中国種とハイブリッドが98%にも及んでいます.外来種の持ち込みは自然界に取り返しのつかない影響を及ぼしてしまいます.
広島県でも,2022年5月に広島市で交雑種の個体群が見つかりました.その扱いについては議論の真っ最中です.
河川環境の変化により,生息地の分断,巣穴や隠れ家の消失の問題も起きています.今は生息が確認されている河川でも10年後にも同じように見られるかはわかりません.オオサンショウウオのすみやすい川づくりが求められています.
目次
- オオサンショウウオって?
- 不思議な生き物オオサンショウウオの知られざる秘密をご紹介.
- 経緯
- 博物館とオオサンショウウオの出会い
- エコミュージアム
- なぜ博物館がオオサンショウウオに関わるのでしょう.
- 活動報告
- 2011年からの調査・活動結果をまとめています.
- 動画集
- オオサンショウウオに関する動画集です.
- イベント情報
- 今後実施予定のイベントを紹介しています.
- 出版物
- 広島大学総合博物館が関わったオオサンショウウオ関連出版物を紹介しています.
- よくある質問(Q & A)
- よくある質問などをまとめています.ご参考まで.
- 関連リンク
- もっと詳しく知りたい方はこちらもご覧ください.
広島大学総合博物館のイベント
- 2024年12月21日(土)13:00~15:30に広島大学総合博物館『第83回公開講演会』が開催されます.
内 容: シンポジウム「いきものと生きる~生物多様性が減少する今、考え動くために~」
6度目の大絶滅といわれる今、日本各地で生き物を守る活動が展開されています。研究者や保全活動の現場の声を聞いて、今できることを考えてみませんか?
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