刊行物

広島大学所蔵標本・資料

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 広島大学では、1902年創立の広島高等師範学校、1929年創立の広島文理科大学を中心とした前身校9校において多方面に及ぶ学術研究・教育活動が展開され、膨大な学術標本が蓄積されていました。 広島高等師範学校には、初代校長北条時敬先生の栄転を記念し日本で2番目の教育博物館が創立され、展覧会を開催するなど戦前の日本の高等教育を支える重要な役割を担っていました。1945年の原子爆弾によってその学術標本の多くを失いましたが、1949年には新制広島大学が発足し、現在までに11学部11研究科、そして多様なセンター群を保有し、 これらの各部局や教室ごとに特色のある学術標本・資料を活用した教育・研究が行われています。それらの標本・資料の大半は各部局に分散保管されており、1993年に全学的に実施したアンケート調査では、その数は69万点に及ぶものでした。
 広島大学総合博物館は2006年に設置され、広島大学に所蔵する学術標本資料の調査・収集、保存・管理を行い、それらの研究と展示、情報発信にあたることにより、広島大学の社会貢献や研究・教育の向上に資することを目的として、@学術標本資料の調査・収集、保存・管理、A学術標本資料およびそれに関わる研究成果の展示と情報発信、B学術標本資料等を用いた研究の推進、C博物館を活用した体験型・実証型の教育の推進、D博物館を通じた社会連携の推進をミッションとして博物館活動を展開してまいりました。
 本冊子は、博物館が設立からの10年で関係した研究室からの移管や寄贈・寄託された標本を中心に前述の1993年の所蔵標本の中核を担っていた文学研究科考古学教室、理学研究科植物学教室、教育学研究科自然システム講座等の協力を得て標本資料の現状を把握し、今後の学術標本管理の基礎を構築するために作成したものです。  
 残念ながら当館は大学博物館としては後発組であり、スタッフ・スペース・予算が限られているため、上述の学術・標本資料の調査・収集、保存・管理に関するミッションが理想通り遂行されているとは言い難い現状です。膨大な所蔵標本が各部局に散在している現状のなか、全学の標本の具体的な内容にまで踏み込んだ全体像を把握することは容易ではありません。我々の調査不足により、本冊子に掲載されていない標本・資料も数多くあると考えられ、未だ不完全なものであることは否めません。今後の調査により本冊子が増補改訂されていかなければならないものであることは間違いありません。
(編集後記より)