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     宮島自然植物実験所ではどんな卒業研究ができるか

                    広島大学理学部附属宮島自然植物実験所
                                  助教授 豊原源太郎

研究の対象と研究法
1.植物.植生の群集生態学的研究(植物群集と環境の相互関係についての研究)
    植物にとって動物も環境に含まれるので例えば宮島の植生に及ぼす鹿の影響に
    関する研究のように、分かりやすい動物については研究の対象に含まれます。こ
    れまでは特に植生に対する人間活動の影響について解明しようとしてきました。
    特に、近年里山が放置されて人間活動による影響を受けなくなってきたことから、
    遷移に関する研究に力を入れてきています。植生図化による遷移の研究は独創的
    なものと自負しています。

    例:アカマツニ次林の遷移に関する研究、山火事跡地に於けるアカマツ次林の
     成立過程、植生図化によるマツ枯れ後のアカマツ次林の遷移に関する研究、
     路傍雑草群落の生態学的研究など

2.植物の個体群生態学的研究(植物個体群と環境の相互関係についての研究)
    特定の種についての生態を調べて環境との関係を研究します。

   例:ウラジロとコシダの生育環境の違いについて、宮島におけるタカノツメの生
     育環境について、宮島における帰化植物の動態など、
     植物季節学的研究(フェノロジー)

   例:コナラ属植物のフェノロジー、紅葉に関する研究、宮島の森林群落構成種の
     フェノロジーなど(群落の成立に関わる各種植物のフェノロジー戦略につい
     ての研究)このテーマの場合、卒論を3月から始めるのが良い。

3.島嶼生物地理学的研究
 (島という隔離環境下での生物の分布とその生活についての研究)
   例 宮島と本土または周辺の島について各種群落の比較研究
     島のサイズと生物多様性(群落の多様性も含む)との関係

調査地
 野外調査によりデータ収集を行うので、どこの植生について調べるのかその場所が問題
となります。希望があれば日本の植生全般についての植物生態学的研究ができますが、経
費がかかるので、その制約があります。交通に関わる経費は原則として自前です。
 近年、宮島に関する生態学的研究がほとんど為されていないので、宮島とその周辺部の
研究に力を入れたいと思っています。島嶼生物地理学的な研究も進めたいので、島のサイ
ズと生物多様性との関係を知るために、宮島近辺の大小さまざまな島の調査も行いたいと
思います。

* 卒業研究を行うための条件として、特に植物を良く知っていないとできないというこ
とはありません。すぐに詳しくなります。卒論のテーマは本人としばらく話し合って様子
を見ながら適性を見つけだして決めることになります。野外調査が主体となるので、各自
に無理のないフィールドを考えたいと思います。