植物の病害虫
広島大学 > デジタル自然史博物館 > メインページ > 広島大学の自然 > 東広島植物園 > 植物の病害虫
植物の病害虫
昆虫
子嚢菌(しのうきん)
- サクラてんぐ巣病菌
- サクラに感染する子嚢菌.
ウイルス
虫こぶ(虫えい)
虫こぶ(虫えい)とは
昆虫・ダニなどが植物体や植物の遺伝子に作用し,組織の異常発達を引き起こすことで形成される「こぶ」のこと.虫瘤(むしこぶ),虫癭(ちゅうえい)などと呼ばれる.形成者はむしに限らず線虫や菌類であることもあり,単に英語名でGall(ゴール)と呼ぶこともある.このページでは昆虫・ダニといった「むし」が形成者のものに絞って解説する.
虫こぶはいわば,むしの食料兼シェルターである.形成者は植物体に卵を産み付けるのと同時に何らかの働きかけをして,虫こぶを導入する.虫こぶの中で孵化した幼虫は,植物の甘露を摂取し,自身の排泄物を植物の細胞壁に吸収してもらい,さらに分厚い壁で外敵からも守られる.こうしてぬくぬくとシェルター暮らしを送って成長し,用済みの虫こぶから出ていくのだ.
さらに虫こぶは単に植物の形状を物理的に変化させるだけでなく,植物が自身の防御物質として利用している化合物をコントロールして,化学的な変化も引き起こすことが知られている.たとえばヌルデシロアブラムシが形成するヌルデミミフシは,ポリフェノールの一種であるタンニンを通常よりも多く含む.これは捕食者を寄せ付けない効果があるとされている.他にも,虫こぶが導入された葉は落葉後も微生物による分解が遅れるという報告もある.虫こぶは植物-むし間だけでなくその土地全体の生態系にも影響を及ぼすのだ.
一方で虫こぶは人間との関わりも深い.中世ヨーロッパではタマバチの虫こぶの成分を利用して没食子インクが作られてきた.また,日本でも上のヌルデミミフシがお歯黒の染料として用いられたり,昭和以降には五倍子(ふし)という漢方薬として重宝されたりしてきたという歴史がある.
虫こぶとそうでないもの
虫こぶは「植物の組織が異常に発達した状態」である.したがって,オトシブミが葉を切って作るゆりかごや,ハモグリガの幼虫がみかんの葉を食べ進む際にできる迷路模様などは虫こぶとは呼ばないので注意が必要.これらは葉が変形しただけであるから,虫こぶの定義に当てはまらない.
名前の付け方
一般に,(宿主の植物名)+(形成される場所)+(形態的特徴)+フシ(虫こぶの意)という規則に則り命名される.
虫こぶが形成される場所は葉,茎,芽,実など.特徴としては球状(タマ),いぼ状(イボ),つぼ状(ツボ),ふくろ状(フクロ)などと形容する.虫こぶが毛におおわれているときは「ケ」がつくこともある.
つまり,虫こぶの和名を見るだけでどんな虫こぶかある程度知ることができるのが特徴である.
また,形成者のむしの和名についても,宿主となる植物名からはじまるものがほとんどである.(例:ケヤキヒトスジワタムシ)一般に虫こぶにおいて,寄主と宿主は1:1の関係になることが多い.
植物から調べる
以下では東広島キャンパス内で見られた虫こぶを紹介します.
イヌツゲ
- イヌツゲタマフシ
エノキ
- エノキハイボフシ
クヌギ
- クヌギエダイガフシ(編集中)
- クヌギハケタマフシ(編集中)
- クヌギハケツボタマフシ(編集中)
ソヨゴ
- ソヨゴメタマフシ
ヌルデ
ビロードイチゴ
- キイチゴハケフシ
ヨモギ
- ヨモギハシロケタマフシ(編集中)
- ヨモギハベリマキフシ(編集中)
- ヨモギクキコブフシ
- ヨモギクキナガズイフシ
形成者から調べる
- ケヤキヒトスジワタムシ:ケヤキの葉に寄生するアブラムシ.ケヤキハフクロフシを形成する.
- ヌルデシロアブラムシ:ヌルデに葉に寄生するアブラムシ.ヌルデミミフシを形成する.