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+ | * 春の七草を現在の呼び名にすると,「芹」は[[セリ]],「なづな」は[[ナズナ]],「御形」は[[ハハコグサ]],「はくべら」は[[コハコベ]],「仏座」はシソ科の[[ホトケノザ|ホトケノザ ''Lamium amplexicaule'' L.]]ではなくキク科の[[コオニタビラコ]],「すずな」はカブ,「すずしろ」はダイコンを指す. | ||
+ | * 野菜のカブとダイコン以外は,いずれも春の水田雑草として見られるもので,もともとは旧暦の1月7日に七草粥として食べ,邪気を払い,無病息災を祈るものであった.いくつかの種は,農耕文化とともに中国から渡来した史前帰化植物と考えられる. | ||
+ | * 本来は耕作地の周辺などで生育する植物であるため,旧暦の当該月に見られるものが多い.近年,栽培されたものが販売されるようになり,本来の生育時期よりも早く入手できるようになっている. | ||
+ | * [[奥村_2016|奥村(2016)]]によれば,地域や時代によって,春の七草に他の種が含まれる場合がある. | ||
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+ | ファイル:20161210ナズナ宮島口byHTsubotaS.jpg|200px|thumb|ナズナ 広島県廿日市市宮島口 Miyajima-guchi, Hatsukaichi-shi, Hiroshima, SW Japan(撮影: 坪田博美.December 10, 2016) | ||
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+ | ファイル:20170330コオニタビラコ花_三原市沼田東町_池田撮影_P3301948.JPG|200px|thumb|right|コオニタビラコの花(広島県三原市沼田東町; 撮影: 池田誠慈, Mar. 30, 2017) | ||
+ | ファイル:20190409ダイコン花_東広島市鏡山_池田撮影_IMG_41668s.JPG|200px|thumb|right|ダイコンの花(逸出)(広島県東広島市鏡山 東広島植物園; 撮影: 池田誠慈, Apr. 9, 2019) | ||
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+ | ;すずな:古名: すずな,漢字: 蕪(菘),現代名: カブ ''Brassica rapa'' L. var. ''rapa''(アブラナ科 Brassicaceae) | ||
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+ | *''Raphanus sativus'' L. var. ''hortensis'' Backer ダイコン | ||
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+ | ===Caryophyllaceae ナデシコ科=== | ||
+ | *[[コハコベ|''Stellaria media'' (L.) Vill. コハコベ]] | ||
+ | *[[ミドリハコベ|''Stellaria neglecta'' Weihe ミドリハコベ]] | ||
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+ | ===Asteraceae キク科=== | ||
+ | *[[コオニタビラコ|''Lapsanastrum apogonoides'' (Maxim.) J.H.Pak & K.Bremer コオニタビラコ]] | ||
+ | *[[ハハコグサ|''Pseudognaphalium affine'' (D.Don) Anderb. ハハコグサ]] | ||
− | == | + | ===Apiaceae セリ科=== |
− | + | *[[セリ|''Oenanthe javanica'' (Blume) DC. セリ]] | |
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− | == 春の七草に関する歌 == | + | ==春の七草に関する歌== |
「せり・なずな・おぎょう・はこべら・ほとけのざ・すずな・すずしろ・これや七草」 | 「せり・なずな・おぎょう・はこべら・ほとけのざ・すずな・すずしろ・これや七草」 | ||
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=== 七草を刻む時に歌う歌 === | === 七草を刻む時に歌う歌 === | ||
「ななくさ なずな 唐土の鳥が 日本の土地へ 渡らぬ 先に ストトン ストトン」 | 「ななくさ なずな 唐土の鳥が 日本の土地へ 渡らぬ 先に ストトン ストトン」 | ||
;歌の解説: 現在,鳥インフルエンザが問題になっているが,これは中国大陸からの渡り鳥による伝染病である.昔の人は,「唐土」(中国大陸)から渡ってくる鳥が悪いものをもたらすことを,既に知っていた.昔の人の知恵には敬服の至りである. | ;歌の解説: 現在,鳥インフルエンザが問題になっているが,これは中国大陸からの渡り鳥による伝染病である.昔の人は,「唐土」(中国大陸)から渡ってくる鳥が悪いものをもたらすことを,既に知っていた.昔の人の知恵には敬服の至りである. | ||
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+ | ==七草粥== | ||
+ | [[ファイル:20180109七草がゆ材料_池田撮影_IMG_24038.JPG|200px|thumb|right|茹でた七草(撮影: 池田誠慈, Jan. 9, 2018)]] | ||
+ | [[ファイル:R1090658七草がゆ関先生坪田撮影20180107as640.jpg|200px|thumb|right|七草粥(調理:関 太郎; 撮影: 坪田博美, Jan. 6, 2015)]] | ||
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+ | ===七草粥(かゆ)=== | ||
+ | *日本の行事食.無病息災を願って食べられる. | ||
+ | *人日(じんじつ)の節句(1月7日)の朝に食べるお粥で,春の七草をいれた粥を食べると邪気を払い万病を除くと言い伝えられてきた風習.新しい年を恙なく,家族一同が健康な日を過ごせるようにとの願いをこめている. | ||
+ | *古くは中国の年初めに天気によって占う風習に由来している. | ||
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+ | ===七草粥の作り方=== | ||
+ | *白粥に,細かく刻んだ七草を加える.刻む前に,さっと茹でると青臭さが消える. | ||
+ | *本来は旧暦の行事であるので,新暦の1月7日は半月から1か月程度季節が早いため七草をすべて採集するには時期が早く,他の青菜で代用することもある.また,最近は店頭で七草セットが販売されている. | ||
== 慣用名== | == 慣用名== | ||
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− | * [[広島大学理学部附属宮島自然植物実験所・比婆科学教育振興会_1997|広島大学理学部附属宮島自然植物実験所・比婆科学教育振興会(編). 1997. 広島県植物誌. Pp. 832. 中国新聞社, 広島.]] | + | *[[広島大学理学部附属宮島自然植物実験所・比婆科学教育振興会_1997|広島大学理学部附属宮島自然植物実験所・比婆科学教育振興会(編). 1997. 広島県植物誌. Pp. 832. 中国新聞社, 広島.]] |
+ | *[[奥村_2016|奥村彪生. 2016. 日本料理とは何か:和食文化の源流と展開. 606 pp. 農山漁村文化協会, 東京.]] | ||
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2021年5月29日 (土) 18:57時点における最新版
春の七草 Seven spring flowers (Nanakusa: seven edible wild herbs of spring)
解説
- 倉時代の河海抄などで「芹(せり),なづな(なずな),御形(おぎょう),はくべら,仏座(ほとけのざ),すずな,すずしろ,これぞ春の七草」として詠われる植物.一般的には,「御形」は「おぎょう(ごぎょう)」,「はくべら」は「はこべら」と呼ばれる.秋の七草が鑑賞を目的としたものであるのに対して,春の七草は食用になる種があげられている.
- 春の七草を現在の呼び名にすると,「芹」はセリ,「なづな」はナズナ,「御形」はハハコグサ,「はくべら」はコハコベ,「仏座」はシソ科のホトケノザ Lamium amplexicaule L.ではなくキク科のコオニタビラコ,「すずな」はカブ,「すずしろ」はダイコンを指す.
- 野菜のカブとダイコン以外は,いずれも春の水田雑草として見られるもので,もともとは旧暦の1月7日に七草粥として食べ,邪気を払い,無病息災を祈るものであった.いくつかの種は,農耕文化とともに中国から渡来した史前帰化植物と考えられる.
- 本来は耕作地の周辺などで生育する植物であるため,旧暦の当該月に見られるものが多い.近年,栽培されたものが販売されるようになり,本来の生育時期よりも早く入手できるようになっている.
- 奥村(2016)によれば,地域や時代によって,春の七草に他の種が含まれる場合がある.
春の七草
- せり(セリ)
- 古名: せり,漢字: 芹,現代名: セリ Oenanthe javanica (Blume) DC.(セリ科 Apiaceae)
- なずな(ナズナ)
- 古名: なずな,漢字: 薺,現代名: ナズナ Capsella bursa-pastoris (L.) Medik.(アブラナ科 Brassicaceae)
- おぎょう(ごぎょう,ハハコグサ)
- 古名: おぎょう,漢字: 御行,現代名: ハハコグサ Pseudognaphalium affine (D.Don) Anderb.(キク科 Asteraceae)
- はこべら(ハコベ)
- 古名: はこべら,漢字: 繁縷,現代名: ハコベ(コハコベ Stellaria media (L.) Vill.,ミドリハコベ Stellaria neglecta Weihe)(ナデシコ科 Caryophyllaceae)
- ほとけのざ(コオニタビラコ)
- 古名: ほとけのざ,漢字: 仏の座,現代名: コオニタビラコ Lapsanastrum apogonoides (Maxim.) J.H.Pak & K.Bremer(キク科 Asteraceae).シソ科 Lamiaceaeのホトケノザ Lamium amplexicaule L.とは異なる.
- すずな
- 古名: すずな,漢字: 蕪(菘),現代名: カブ Brassica rapa L. var. rapa(アブラナ科 Brassicaceae)
- すずしろ
- 古名: すずしろ,漢字: 大根(蘿蔔),現代名: ダイコン Raphanus sativus L. var. hortensis Backer(アブラナ科 Brassicaceae)
分類体系順
Brassicaceae アブラナ科
- Brassica rapa L. var. rapa カブ
- Capsella bursa-pastoris (L.) Medik. ナズナ
- Raphanus sativus L. var. hortensis Backer ダイコン
Caryophyllaceae ナデシコ科
Asteraceae キク科
- Lapsanastrum apogonoides (Maxim.) J.H.Pak & K.Bremer コオニタビラコ
- Pseudognaphalium affine (D.Don) Anderb. ハハコグサ
Apiaceae セリ科
春の七草に関する歌
「せり・なずな・おぎょう・はこべら・ほとけのざ・すずな・すずしろ・これや七草」
七草を刻む時に歌う歌
「ななくさ なずな 唐土の鳥が 日本の土地へ 渡らぬ 先に ストトン ストトン」
- 歌の解説
- 現在,鳥インフルエンザが問題になっているが,これは中国大陸からの渡り鳥による伝染病である.昔の人は,「唐土」(中国大陸)から渡ってくる鳥が悪いものをもたらすことを,既に知っていた.昔の人の知恵には敬服の至りである.
七草粥
七草粥(かゆ)
- 日本の行事食.無病息災を願って食べられる.
- 人日(じんじつ)の節句(1月7日)の朝に食べるお粥で,春の七草をいれた粥を食べると邪気を払い万病を除くと言い伝えられてきた風習.新しい年を恙なく,家族一同が健康な日を過ごせるようにとの願いをこめている.
- 古くは中国の年初めに天気によって占う風習に由来している.
七草粥の作り方
- 白粥に,細かく刻んだ七草を加える.刻む前に,さっと茹でると青臭さが消える.
- 本来は旧暦の行事であるので,新暦の1月7日は半月から1か月程度季節が早いため七草をすべて採集するには時期が早く,他の青菜で代用することもある.また,最近は店頭で七草セットが販売されている.
慣用名
備考
文献(出典)
- 広島大学理学部附属宮島自然植物実験所・比婆科学教育振興会(編). 1997. 広島県植物誌. Pp. 832. 中国新聞社, 広島.
- 奥村彪生. 2016. 日本料理とは何か:和食文化の源流と展開. 606 pp. 農山漁村文化協会, 東京.
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