「広島県の植物相の現状と未来」の版間の差分

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 広島県は,県面積の70%が花崗岩や流紋岩類で,水分の保持能力が小さく崩れやすい.このような環境に適応したアカマツ林が広く分布している.これらのアカマツ林は,いわゆる里山として,古くから県民に親しまれてきた.しかし,近年の農村の過疎化,林業人口の減少,プロパンガスなどの燃料革命,木材価格の低迷などの要因で,松林の管理が行われなくなった.これによって,全国第1位の産出量を誇っていた広島県のマッタケ(マツタケ)も激減した.
 
 広島県は,県面積の70%が花崗岩や流紋岩類で,水分の保持能力が小さく崩れやすい.このような環境に適応したアカマツ林が広く分布している.これらのアカマツ林は,いわゆる里山として,古くから県民に親しまれてきた.しかし,近年の農村の過疎化,林業人口の減少,プロパンガスなどの燃料革命,木材価格の低迷などの要因で,松林の管理が行われなくなった.これによって,全国第1位の産出量を誇っていた広島県のマッタケ(マツタケ)も激減した.
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 昭和40年代から,広島県の沿岸部で[[アカマツ]]や[[クロマツ]]が枯れはじめ,現在では内陸部へしだいに広がりつつある.この「松枯れ」に対しては,大気汚染,酸性雨(霧),マツノザイセンチュウなど,多くの原因説がある.広島県では,松枯れ防止のために薬剤散布を実施しているが,その賛否をめぐっても議論が多い.上述したように,広島県の「
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松枯れ」は,松林の手入れをしなくなったことと,森林の遷移が進行したことの影響が大きい(豊原 1996).一方,宮島などでは,マツノザイセンチュウに抵抗性をもったマツが自然群の中から見つかっている.宮島
  
 
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2016年11月28日 (月) 07:16時点における版

広島大学 > デジタル自然史博物館 > 植物 > 郷土の植物 > 広島県の植物相と植生 > 広島県の植物相の現状と未来 | 広島県植物誌 / 広島県植物誌補遺

広島県の植物相の現状と未来(広島大学理学部附属宮島自然植物実験所・比婆科学教育振興会 1997

 広島県は,全体に山が低く,起伏が緩やかであるため,湿原や池沼が多かった.湿原は,古来,水田として開発されて来たが,近年の減反政策や過疎化によって放棄されたり,住宅地・工業団地・レクリエーション施設などへの転用が目立っている.池沼は,自然的なものもあるが,西条盆地や世羅台地の池沼の大部分は灌漑用である.これらの池沼も,水田の減少とともに管理されなくなり,また埋め立てられたりした.一方,広島県の海岸は,工業用地としての埋め立てや護岸工事が進み,本土側はもちろん,島嶼部にも自然海岸はほとんどなくなってしまった現状である.

 湿原・池沼・海岸などに生育する植物は,形態的にも生態的にも特殊化したものが多く,環境のわずかな変化に適応できない種が多い.車の例でいえば,水生植物,海岸植物や塩生植物などはブルドーザーや耕運機のような特殊車両で,一般の用途への転用がむつかしい.広島県の植物相と植生の保全において,湿原,池沼,海岸(砂浜・塩湿地・汽水),河川などの水環境の保全が,緊急の課題であろう.

 広島県は,県面積の70%が花崗岩や流紋岩類で,水分の保持能力が小さく崩れやすい.このような環境に適応したアカマツ林が広く分布している.これらのアカマツ林は,いわゆる里山として,古くから県民に親しまれてきた.しかし,近年の農村の過疎化,林業人口の減少,プロパンガスなどの燃料革命,木材価格の低迷などの要因で,松林の管理が行われなくなった.これによって,全国第1位の産出量を誇っていた広島県のマッタケ(マツタケ)も激減した.

 昭和40年代から,広島県の沿岸部でアカマツクロマツが枯れはじめ,現在では内陸部へしだいに広がりつつある.この「松枯れ」に対しては,大気汚染,酸性雨(霧),マツノザイセンチュウなど,多くの原因説がある.広島県では,松枯れ防止のために薬剤散布を実施しているが,その賛否をめぐっても議論が多い.上述したように,広島県の「 松枯れ」は,松林の手入れをしなくなったことと,森林の遷移が進行したことの影響が大きい(豊原 1996).一方,宮島などでは,マツノザイセンチュウに抵抗性をもったマツが自然群の中から見つかっている.宮島

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備考

  1. 黎明期
  2. 明治・大正より昭和前期(1868~1945年)
  3. 戦後(1945年)~現代