植物観察会/KansatsukaiPageMiniLetter355

提供: 広島大学デジタル自然史博物館 植物
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ヒコビアミニレター No. 355 (2009年6月14日)

2009年6月7日の第480回植物観察会は大阪府交野市私市(きさいち)にある大阪市立大学理学部附属植物園で行われた.天気は晴れ.参加者は17名.現地に10時30分集合.入園料350円.この植物園は昭和25(1950)年に発足し,標高40-120 m,面積約25.6 haあり府下最大級の植物園.前身は,昭和16(1941)年開設の大阪市興亜拓殖訓練道場.大部分が樹木の植栽となっており,様々なコレクションだけでなく,多くの樹林型が展示されている.

挨拶と日程の説明の後,岡田博園長の案内で園内を内回りと外回りのコースを歩く.入口近くにある水生植物が展示された水槽を見学.黒田緑化事業団の助成によって整備されている水槽には,近畿から集められた水生植物が保存されており,クサレダマやノウルシ,オオアブノメ,カワヂシャなど稀少な植物を間近に見ることができた.また,花期にはまだ早かったが,非常に多くのハスの品種が集められていた.当園では他にもナシやキョウチクトウの品種のコレクションがある.展示室で板根などの説明を受けた後,樹木見本園に進む.ここでは日本の森林で見られる代表的な樹木を見ることができた.クスノキやオガタマノキなどの常緑樹から始まって落葉樹,針葉樹と続く.樹木見本園や水生植物園周辺にウルシ科のチャンチンモドキ Choerospondias axillaris (Roxb.) B.L.Burtt & A.W.Hillが植栽されており説明を受ける.チャンチンモドキは高さ約25 mになる落葉高木で,互生で奇数羽状複葉.幹は縦に細かく裂け,薄く剥がれる.雌雄異株で,5月に赤褐色の小さな花をつける.今回はすでに花期を過ぎていた.果実は秋に成熟し,ウメのような厚い果肉と中に核を持つ.果肉は外果皮で,熟すと黄色くなり甘酸っぱく可食.中にある核は内果皮が木質化したもので,長楕円体で2 cm弱の長さがあり,非常に硬く,上部に5つの発芽孔を持っている.親木の下に種子を含んだ内果皮が大量に落ちており,発芽孔から芽が出た若木が多数あった.現在は九州以南,中国から東南アジア,ヒマラヤまで分布しているが,核の形態が非常に特徴的で植物遺体としても残りやすく,日本各地の遺跡から出土しているため,昔はもう少し分布域が広かったのではないかとのこと.樹木見本園の周辺ではイイギリが目立ち,ヤマボウシが満開であった.また,ササユリがちょうど盛りを過ぎた時期で,ヤマシャクヤクの花が終わっていた.日本ではあまり植栽されていないシナユリノキを観察した後,昼食.昼食後,特別に研究用温室を見せていただく.キョウチクトウのコレクションを見た後,樹木園や樹林見本林を観察した.樹林見本林は,日本で見られる樹林型を見本林として整備している.日本の他の植物園ではあまりなされていない展示であり,当園の特徴のひとつになっている.外国産針葉樹園では,高さ30 mに達するスギ科のタイワンスギやコウヨウザン,南半球に分布するナンヨウスギ科のブラジルマツ,世界一高くなることで有名なセコイヤ,生きた化石として有名なメタセコイヤ,呼吸のための気根(呼吸根)が目立つヌマスギなどが林立していた.メタセコイヤはこの植物園の元園長である三木茂博士が 1941年に化石植物として命名したもので,この園のものは日本にメタセコイヤが導入されたかなり早い時期である1950年に植栽されたとのこと.また,その一角にナンヨウスギ科の植物でウォレマイパイン Wollemia nobilis W.G.Jones, K.D.Hill & J.M.Allenが植栽されていた.ウォレマイパインは1994年にオーストラリアのウォレマイ国立公園で発見された裸子植物で,2億年くらい前の姿を残した生きた化石とも言われる.野生では成木が100本程度しかなく,植物学的にも貴重な植物である.樹林見本林では,照葉樹林や落葉樹林,針葉樹林を観察した.道の左右で異なる樹林型が接したところがあり,お互いに比較できるように考えられて配置されていた.最後に時間の関係で十分に見ることができなかった水生植物園をもう一度観察して,15時頃解散.

植物園のある私市という地名は古い地名で,日本書紀に「私部(きさべ=后妃の部)」として現れる.最近,植物園の周辺は宅地化が進んでおり,乾燥化など園管理の上でも様々な問題が生じているとの説明があった.今回,「植物に関する勉強会」という観察会の原点に立ち返る意味で趣向を変えて遠方の植物園を訪ねたが,参加者からは好評であったので,今後毎年1,2回のペースで続けて行きたい.最後に,岡田園長には大変お世話になりました.この場を借りてお礼申し上げます.

(H. Tsubota 記)

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