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コケの分類
蘚類(セン類)
世界に約100の科,700属,10,000種が知られる.日本には62科,305属,約1,030種が分布する.
蘚類は以下の4つの仲間に分類される.これら4つ亜綱はそれぞれいくつかの形態的特徴でまとめられている.
セン綱 -亜綱の主要形質比較-
形 質 | ナンジャモンジャゴケ亜綱 | クロゴケ亜綱 | マゴケ亜綱 | ミズゴケ亜綱 | |
配偶体関連 | 原糸体 | ? | ひも状多列細胞 | 葉状 | 単列糸状 |
葉の中肋 | − | + | − | ± | |
偽 柄 | − | + | + | − | |
胞子体関連 | 帽 | + | +(脆弱) | +(痕跡的) | +(強壮) |
気 孔 | − | − | 偽孔 | + | |
蒴の裂開線 | たて1本 | たて4,8本 | よこ環状1本 | よこ環状1本 | |
蒴 歯 | − | − | − | + | |
軸 柱 | +? | +ドーム状 | +ドーム状 | +円柱状 | |
気 室 | − | − | − | + |
ミズゴケ類(ミズゴケ亜綱)
世界に2科2属約150種が知られる.日本には1属約35種が分布する.ほとんどの種は湿地に生育する.
植物体はあまり分枝しないで直立する硬い茎をもち,節が発達し,そこから開出する枝と垂下する枝が生じる.
ふつう枝につく葉と茎につく葉の形や大きさが異なる.葉身細胞には小型で線形〜うじ虫状の葉緑細胞と大型で透明の透明細胞の2種の細胞が分化し,数個の葉緑細胞が1個の透明細胞を囲むように規則正しく配列する.大型細胞にはふつう孔か偽孔,細胞内面壁に線状肥厚が発達し,水を蓄える.
蒴は球形で,短い蒴柄をもつ.その足は偽柄とよばれる茎の先端部がのびて葉をつけていない部分の先端部に埋まっている.蒴には蒴歯が発達しない.蒴壁の表面には偽気孔があるが,気孔はない.帽は発達しない.
葉状の原糸体をもつ.
胞子にはY字条線がある.
クロゴケ類(クロゴケ亜綱)
世界に1科2属約100種が知られる.日本には1属2種が分布する.
植物体は茎と葉が分化し,ふつう濃褐色〜黒褐色.
蒴は蓋がなく,縦に4,8本の裂開線ができる.蒴柄は短く,足は偽柄(ミズゴケのものに類似の器官)に埋まる.気孔はない.帽は痕跡的.
原糸体,仮根は多細胞列の糸状.
ナンジャモンジャゴケ類(ナンジャモンジャゴケ亜綱)
世界に1科1属2種が知られる.日本には1種が分布する.
植物体は繊細で,基部で横走枝を出し,茎の中部から基部に透明の房状の粘液細胞をもつ.
葉は棍棒状.仮根は発達しない.
造卵器は葉腋につくが,保護器官はない.造卵器の頸部は6細胞列.
蒴柄はじょうぶ.蒴は長卵形で,蓋が発達せずに,1本の裂開線をもつ.軸柱をもつ.気孔はない.帽は僧帽状.
マゴケ類(マゴケ亜綱)
蘚類の種の大部分がこの仲間.
世界に90余りの科,650を超える属と約10,000種が知られる.日本には15目58科302属約1,000種が分布する.
植物体の形態は多様.
茎と葉が分化し,茎は長く伸びて基物を這うものと直立するものがある.茎は枝分かれせずに単一のものから,規則正しく分枝して羽状や樹状になるものまで多様.
葉は円形,卵形,披針形,線形,さじ形など.中肋がないもの,1本,2本で短いものなど.葉身部が1細胞層から多層のものまで.葉細胞は方形,長方形,線形,うじ虫形など.細胞壁も薄壁から厚壁,均一に肥厚するものから節状に肥厚するもの,波状になるものなど.細胞表面が平滑なものからさまざまな乳頭が発達するものまで.
造卵器と造精器は苞葉に包まれる.
蒴はじょうぶで,ふつう蒴より長い蒴柄をもつ.蒴には気孔が発達する.蒴の形は分類群に特徴的な形態を示す.蒴には軸柱があり,ふつう蓋が分化し,蓋には嘴がある.蒴の口部に蒴歯が発達する.蒴歯が一重のものと二重のものがあり,蒴歯の形態や表面模様も多様となり,分類基準として使われる.よく発達した帽がある.
原糸体はふつう糸状.
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